猫をひき逃げした友人の異変
一年ほど前に、
友人が猫を轢(ひ)いた。
猫は執念深い生き物だから、
もし轢いてしまっても、
『罪悪感を持ったり、
可哀相と思ったりしてはいけない』
と友人は考え、
非情にもひき逃げをしたそうだ。
友人に異変が起こったのは、
それから数日経ってからだ。
いつものように真面目に
講義を受けていると、
どこからともなく「にゃ~ん」と、
猫の鳴き声が聞こえて来たのだ。
キャンパスには猫が多いが、
教室にまで鳴き声が聞こえて来ることなど
今までなかった。
不審に思って周りをキョロキョロと
見回してみると、
他の受講者は皆揃って
友人の方を見ているのだ。
訝(いぶか)しく思いながらも
講義に集中すると、
また「にゃ~ん」と聞こえる。
そんなことが、
その日から頻繁に起こり始めた。
授業の時だけではなく、
家に一人でいる時や、
仲間と飲んでいる時などにも、
ちょくちょく泣き声が聞こえるのだという。
そんなある日、
他の学生が友人に話しかけた。
「どうして○○さんは時々、
授業中に猫の鳴きまねをするの?」
友人は、びっくりした。
家に帰ってデジカメをセットし、
自分を数時間撮影した。
それを見てみると、
確かに自分が無意識に「にゃ~ん」と、
猫の鳴きまねをしているのだという。
轢き殺した猫の祟りだと恐れた友人は、
神社へ供養に行き、
猫を轢いた現場に魚を供えると、
この不思議な現象は治まったそうだ。
(終)