聞こえるはずのない音、そして・・・

椅子

 

仲の良い男友達の家に遊びに行ったけれど、

生臭いような香ばしい匂いがしていた。

 

・・・しかも、

何故か匂いの元は突き止められなかった。

 

彼は笑って「この家、出るからねえ~」

と言っているだけ。

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怪奇現象に一切動じない彼は・・・

彼いわく、

 

クローゼットのドアの片方だけが

外れて吹っ飛んできたり、

 

風呂場の排水溝に長い髪の毛が数本、

頻繁に落ちていたりするらしい。

 

彼は一人暮らしで坊主頭なのに。

 

そんなある日、

彼と世間話で長電話していたことがあった。

 

その時にずっと気になっていたから、

 

「アンタ、さっきから椅子の音が

ギィギィうるさいよ!」

 

(彼のPCデスクの椅子は、

背をもたれるとギィギィと音がした)

 

と言ったら、

 

「・・・はぁ?

今ソファーに座ってるんだけど?」

 

と言う。

 

その後も彼には聞こえないギィギィ音が、

私の電話からは聞こえていた。

 

そして数ヵ月後。

 

また彼と電話をしている時に

ギィギィと音が聞こえてきたので、

 

「今どこに座ってる?」

 

と訊いてみた。

 

すると、彼はこう言う。

 

「ん?ソファーだけど?」

 

あぁ嫌だなぁと思っていると、

段々とその音が大きくなっていき、

 

耳障りな金物のような音が、

かなりテンポを速めて聞こえてきた。

 

ギィギィと鳴っていた音は次第に速くなり、

そのうち『キィキィキィキィ』と変わる。

 

これはまずいと思ったけれど、

 

彼には聞こえていないようだったので

無視して話しを続けていると、

 

その金物音が違う音に聞こえ始めた。

 

女が笑っている・・・

 

金切り声をあげて、

電話の向こうで女がけたたましく笑っている。

 

私はそれに気付いた瞬間、

 

「ちょっとラーメン食べたいんだけれど、

一人じゃ行けないから付き合って」

 

と彼を誘い出して家から出させた。

 

ラーメンを食べながら事情を説明したけれど、

彼は意に介していないようで・・・

 

「スゲー!!(笑)」

 

と他人事のようにはしゃいでいた。

 

さらに数ヶ月後。

 

彼に頼まれて別の友人と3人で、

彼の部屋の前の草むしりをしていた。

 

(彼の部屋はアパートの1階で、

ベランダの前が雑草だらけになっていた)

 

すると、草むしりをしていた友人が、

ふいに「何これ・・・」と言うので見てみると、

 

ベランダのコンクリ床の裏側部分に、

黒ずんだ茶色い紙がびっしり貼ってあった。

 

何があるのか分からないけれど、

触ってはいけない気がしたので一切触れず、

 

彼にはこの事を伝えてもいない。

 

彼は今もあの部屋に住んでいて、

 

時々おかしな事は起こるみたいだけれど、

特に実害は無いと言っている・・・

 

(終)

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