廃病院へ肝試しに行った翌日に

廃病院

 

もう8年も前になるが、私が実際に体験した話です。

 

当時その辺りでは有名だった今は無き廃病院に、彼氏とその友達2人の計4人で肝試しに行きました。

 

しかし全員が臆病者だったので、全体の4分の1程度を探索して、特に何が起きるでもなく無事帰路につきました。

 

その翌日の夕方、彼氏の突然の訪問で叩き起こされたのですが、特に用事はなかったようで30分程して彼氏は帰っていきました。

 

私は特に気にも留めず、長い昼寝の続きに戻ったのですが、ふと周りの騒がしさに目を覚ましてしまいました。

 

仰向けに寝ている私の視界を、暗いオレンジ色の光を背に小さな黒い影が5つ、ぐるっと取り囲んでいます。

 

一気に意識が覚醒して飛び起きようとしたのですが、体はビクとも動きません。

 

パニックに陥り、もがく私の耳を劈(つんざ)くような、どこからともなく響く大勢の猫の威嚇の声。

 

※劈く(つんざく)

勢いよく突き破る。

 

どれくらいの時間をそうしていたかは定かではありません。

 

突然、月の青白い光が部屋を包み、私はジットリと汗をかいて飛び起きました。

 

すぐに部屋の全ての明かりとテレビをつけ、部屋中に塩を撒き、ようやく落ち着きを取り戻した私は彼氏に電話をかけました。

 

「行ったでしょ!」

 

「・・・なんで分かったの?」

 

私を除いた昨日のメンバーでもう一度あの廃病院へ行き、その足で私の家に来たそうです。

 

理由も聞かずに家に上げてしまった私が悪いのかも知れませんが・・・。

 

心底イラッときたので即別れました、という若き日の思い出。

 

これを昨日母に話したら、「私はネズミに枕元に立たれたよ」と。

 

なんでも、高校生の頃に住んでいた古い家でネズミに遭遇し、それを追いかけ回した晩の話だそうな。

 

親子って心霊体験まで似るんですね。

 

(終)

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