幽霊に触る方法を試してみたら
高校の頃、部活の先輩に『幽霊の触り方』というのを教えてもらった。
それは、扉や窓や押入れ等、なんでも良いのだが、内と外のような区切りが作られるものを利用する。
私がやった方法で説明すると、まず押入れの中に右腕を差し入れて襖を閉じた。
当然、腕の幅だけ隙間が出来るが、その隙間から向こう側を見ないようにする。
それと、向こう側はなるべく暗くする。
私は俯いて自分の影で暗くした。
また、手や指先に意識を集中して、幽霊に触れるのをじっと待つ。
ゆっくり動かしたり、たまに止めたりすると良かった気がする。
私の場合は、これで『触った』と感じた。
誰にも信じてもらえなかったが・・・。
しかしそれ以降、困ったことが起こり始めた。
幽霊を触ったと感じてから、触った方の手に普段の生活でも似たような感触がするようになった。
頻繁ではないが、忘れた頃にフッとあの幽霊に触られたような気がしてビクッとする。
一番ビックリしたのは、受験勉強の息抜きにと、夜中にコンビニへ行こうと歩いている時だった。
腕は歩く時に自然に前後に振れるが、ちょうど右腕が後ろに振れた時、右手をガシッと何かに掴まれた。
私は夜中なのに凄い声で叫んでしまい、色んな意味で全力でコンビニまで逃げた。
高校時代はそれのせいで結構悩んだが、大学に入り、会社に就職し、時間が経つうちに手を触られることも無くなって、そんなことが過去にあったのも最近まで忘れていた。
しかし、このあいだの休みの日に娘と公園に行ったのだが、帰る時になって娘が手を繋いできて、その時の娘の手の感触にふと懐かしさみたいなものを感じた。
あの幽霊の手みたいだなぁって。
(終)