時々ベランダに何かが居るのに気が付いた
彼女と同棲して数ヶ月が経つのだが、時々ベランダに“何かが居る”のに気が付いた。
それは大抵ベランダの隅っこに現れ、手すりから頭だけを乗り出し、隣の部屋を覗くような体勢をしている。
だから顔を見た事はないし、何と呼んでいいか分からないのだが、仮に『あいつ』としておく。
あいつを初めて見た時はさすがに驚いたが、彼女が高名な占い師のところで、「あなたの家には座敷わらしがいるから、良い事があったらベランダにコップ一杯の水を置きなさい」と言われていたので、多分この事かな?と思って不思議と怖い思いはしていなかった。
彼女とそういう話は一切しないが、彼女にはあいつの事は多分見えていないんだと思う。
そして先日の事、彼女がベランダで洗濯物を干している時に、凄い悲鳴が聞こえてきたので俺は慌ててベランダに飛び出した。
すると彼女が、「隣の人が頭を出してこっち覗いてたんだけど、悲鳴を上げて逃げていった」と言う。
後で「私ってそんなにグロかったのかな・・・」と言って凹んでいたが、うちの隣のベランダからこっちを覗いたりなんかしたら、あいつとバッチリ目が合うじゃないか!と俺は思った。
隣人の男があんな悲鳴を上げるなんて、あいつは一体どんな顔をしていたんだ!?
ちなみに、隣の覗き野郎はすぐに引っ越したので、ベランダにコップ一杯の水を供えておいた。
(終)