後悔の念と纏わり憑く生霊 1/2
ちょっと落ち着いたけれど、
現在進行系の話。
長いけど、まぁ聞いて下さい。
俺は過去に二度、
女の子を中絶させたことがある。
一度目は、完全に避妊ミス。
17の若かかりし頃だった。
二度目は、23の時。
二年ほど付き合った彼女なんだけど、
俺は結婚を意識していた。
子供が出来てもいいや、
とか思って、
結婚の約束をした訳でもないのに、
思いっきり中に出していた。
彼女も拒否しないから、
OKなんだと思っていた。
案の定、彼女は妊娠し、
俺はそれをキッカケに
結婚してくれと言った。
もちろんOK・・・
だと思っていたら、
なんと、親から持ちかけられた
縁談が断れないからと、
逆に別れ話をされてしまった。
なぜ縁談が断れないかというのは、
話すと長くなるので割愛する。
要は、家の事情。
政略結婚というわけではないが、
そんな感じだ。
じゃあ、赤ん坊はどうするの?
って話だ。
俺は子供が本当に楽しみだった。
俺一人で育てるから産んでくれと説得したが、
最後には向こうの両親まで出て来て、
今から結婚するのに
他の男の子供がいてどうする、
と言われ、
散々の抵抗もむなしく、
赤ん坊はおろされてしまった。
17の時にはぶっちゃけ、
「あー、めんどくせー」
とか思っていた俺だが、
その時は涙を堪えられなかった。
17の時のことを6年もしてから、
本当の意味で後悔した。
それからの俺は、
妙な体調不良に悩まされ始めた。
肩が重く、食欲もない。
寝ても思い出せない怖い夢を見て、
飛び起きる。
病院に行っても原因不明。
あんなことの後だからストレスなんだろう、
と思っていた。
じきに忘れ、体調も直ると。
しかし、
体調は日に日に悪くなり、
メンタルクリニックなどにも通ったが、
とうとう仕事を休職するはめにまで
なってしまった。
それからは実家に戻り、
家の手伝いをしてしばらく親に
食わしてもらっていたが、
体調は相変わらず最悪だった。
68kgあった体重が、
ニヶ月で52kgまで落ちた。
再び病院に行っても、
やっぱり原因不明。
メンタルクリニックにも、
もう行っても無駄だと思った。
それからしばらくして、
俺は法事に顔を出した。
親戚は俺の変わり様に驚き、
心配の声をかけてくれた。
法事が終わった帰りがけに、
お袋の姉の旦那の妹(叔母)が、
俺に声をかけてきた。
「○○ちゃん(お袋)から話を聞いたよ。
おばちゃんね、
霊媒師の人を知ってるから
紹介してあげようか?」
何を言ってんだこの人、
と思ったが、
治る可能性があるならと思い直し、
後日に連絡を取り、
紹介してもらうこととなった。
その霊媒師曰く、
「水子の霊が憑いています」と。
ショックだった。
確かに二人もおろしている。
俺は子供をおろした話を、
この人にはしていない。
俺はすがるような思いで、
その人に除霊をお願いした。
すると、
「除霊はしますが、
それは水子の霊を供養することに
他ならない。
あなたの今の体調不良は、
言うなれば生霊の影響なのです」
詳しく訊くと、
水子の霊は憑いているが、
その霊は俺にとって
害になる霊ではないという。
その霊に影響する、
俺の後悔の念。
そしてまた別の人の後悔の念が重なり合い、
今の状態になっているとのことだった。
そして、俺以外で後悔している人間も、
同じように憑かれているはずだと。
水子の供養はそこでやってもらった。
わりと呆気なかったが、
本当に心の底から手を合わせた。
ちょっと涙が出た。
半泣きの俺を見て霊媒師が、
「その涙があなたを苦しめる原因なのです」
と言った。
俺以外に後悔している人間。
それは17の頃か23の頃の彼女、
どちらかしかいない。
でもやっぱり、
結婚を断られた彼女の方な気がした。
俺は数ヶ月ぶりに彼女に連絡し、
会う約束をとりつけた。
数ヶ月ぶりに彼女と会った。
彼女は俺を見て、驚いていた。
俺は彼女に霊媒師の話をし、
心当たりはないかと訊ねた。
しかし、
彼女はわからないという。
俺は、「後悔の念」について
問いただした。
子供のことを後悔しているんならやめろと。
(それも変な話だが・・・)
しかし、
彼女は新しい結婚生活も順風満帆で、
幸せな毎日を送っているそうだ。
子供のことは可哀相に思っているが、
特に後悔しているわけでもない、と。
なんだか惨めになり、
その日は話を終えると、
すぐに別れた。
残る、もう一人の彼女かも知れない
と思った俺は、
早速、連絡をしようと思った。
だが、なにせ6年も前に別れたきりで、
連絡先を覚えていない。
俺は特に仲が良いわけでもない
昔の知り合いに片っ端から電話して、
彼女の連絡先を調べた。
すると、ある女の子が、
「あー、○○ちゃんの友達の子でしょ。
○○ちゃん訊けばわかるよ」
と言う。
やった!見つかった!
「じゃあ、
ちょっと訊いてもらいたいんだけど」
と言うと、
「え、でもその子って・・・」
と口ごもる。
どうしたの、と訊くと、
「亡くなったんじゃなかったっけ?」
「はぁ!?」
「え・・・?だって○○くん(俺)が・・・」
「ちょっと待って!どうゆうこと!?」
散々言い渋った挙句、
訊き出したのは信じられない話だった。
(続く)後悔の念と纏わり憑く生霊 2/2