呪う女 17/18

『おう!ひさしぶり!』

なつかしい慎の声。

 

俺はしばし慎と、最近どうよ?

的な話をした後、

 

淳が事故って入院したこと、その病院に

『中年女』が清掃員として働いていること、

 

『中年女』が昔と別人のように、

心を入れ替えている事を話した。

 

慎は『中年女』が謝罪してきたことに対し、

たいそう驚いていた。

 

そして最後に慎は、

『淳が退院したら、

三人で快気祝いをしよう』

 

と言った。

 

もちろん俺は賛成し、

「淳の退院のメドがつき次第連絡する」

 

と伝えた。

 

その翌日、俺は病院に行き、淳に

「慎がおまえの退院が決まり次第、

こっちに帰って来て快気祝いしようってよ!」

 

と伝えた。 

淳はたいそう喜んでいた。

 

それから一週間程、病院に見舞いには

行っていなかった。

 

別に理由は無いが、新学期も始まり、

なかなか行く時間が無かったというのもある。

 

それに『中年女』が更正しているようだったので、

心配も以前ほどはしていなかった。

 

何かあれば、淳から電話があるだろう

と思っていた。

 

そんなある日、淳から電話がかかってきた。

内容は、『来週退院する!』との事だった。

 

俺は「良かったな!」と祝福の言葉と共に、

『中年女』の動向を聞いたが、

 

『普通にゴミ回収の仕事をしている。

特に何もない』との事だった。

 

そして、さらに一週間が経ち、

淳は退院した。

 

俺は学校帰りに、淳の家に立ち寄った。

 

チャイムを押すと、松葉杖をつきながら

淳が出て来た。

 

「おぅ!上がれよ!」

 

足にはギブスをはめたままだったが、

すっかり元気そうだった。

 

淳の部屋でしばし雑談をした。

 

夕方になり俺は帰宅。

夕飯を喰った後、慎に電話をした。

 

「淳、退院したぜ!」

 

『まぢ!そっか、

じゃあ快気祝いしなくちゃな!

すぐにでも行きたいけど部活が忙しいから、

月末頃にそっち行くよ!』

 

との事だった。

 

そして月末の土曜日。

俺、慎、淳。

 

小学校以来、久し振りの三人での

再会だった。

 

昼に駅前のマクドで落ち合った。

 

久し振りに会った慎は、冬なのに浅黒く日焼けし、

少しギャル男気味だった。

 

まぁそれはさておき、夕方まで色々と語った。

 

それぞれの高校の話。

恋の話。

昔の思い出話・・・

 

もちろん、『中年女』の話題も出てきた。

 

あの時、それぞれが何よりも恐ろしく感じていた

『中年女』も、今となればゴミ回収のおばさん。

 

病院での出来事を、俺と淳が

慎に詳しく話してやると、慎は、

 

「あの頃と違って、今ならアイツが

襲って来てもブッ飛ばせるしな!」

 

と笑い飛ばした。

 

もう俺達にとって『中年女』は過去の人物、

遠い昔話で、トラウマでも無くなっていた。

 

夕方になり、俺達はカラオケBOXに行った。

 

久し振りの三人での再会ということもあり、

俺達は再会を祝して酒を注文した。

 

まぁ酒と言っても酎ハイだが・・・

当時の俺達は充分に酔えた。

 

各々、4~5杯ぐらい飲み、

皆ほろ酔いだった。

 

いい気分で唄を歌い、

かなりハイテンションだった。

 

そして二時間経ち、歌にも飽き出した時、

慎がある提案をした。

 

「よーし、今から秘密基地に行くぞ!

あの時、見捨てちまったハッピーとタッチの

供養をしに行くぞ!」と。

 

一瞬、空気が凍った。

俺も淳も言葉を失った。

 

まさか、あの場所に行こうなんて、

予想外の発言だったから。

 

慎はそんな俺達を挑発するように、

「オメーら変わってねーな!

まぢでビビっんの?!ハハッ!」

 

と、少し悪酔いしていた。

 

その言葉に酔っ払い淳が反応し、

「あ?誰がビビるかよ!

喧嘩売ってんのか慎?」

 

とキレ出した。

 

俺は酔いながらも空気を読み、

「おいおい、やめとけって!第一、

淳まだ杖ついてんだぜ?」

 

と言うと慎がすかさず、

 

「あ、そっか。杖ついてちゃ

逃げれねーしな。ハハハ♪」

 

と、かなりの悪酔いしていた。

 

淳はますますムキになり、

「うるせーよ!行きてーんなら行ってやるよ!

お前こそ途中でビビんぢゃねーぞ?」

 

と、まるで子供の喧嘩のようになり、

 

結局、

『ハッピーとタッチの冥福を祈りに』

 

と言う名目で行くことになった。

 

慎、淳は二人とも結構酔っていたのと、

引くに引けなかったんだと思う。

 

まぁ、ハッピーとタッチの供養は

いずれしなければならないと思っていたので、

いい機会かもと少し思った。

 

三人なら恐さも薄れるし。

 

カラオケBOXを出てコンビニに寄り、

あの2匹が大好きだった『うまい棒』と

『コーラ』を買い込み、

 

タクシーで一旦俺の家に寄り、

照明道具を取って来てから、

あの裏山へ向かった。

 

タクシー運転手に怪しげな目で見られつつ、

山の入口でタクシーを降りた。

 

俺は三人でよく遊んだ裏山という

懐かしさと共に、

あの日の出来事を思い出した。

 

こんな夜更けに、また入ることになるとは・・・

 

そんな俺の気持ちも知らずに、

淳は意気揚々と「さぁ、入ろうぜ!」と、

杖を突きながらズカズカと入っていく。

 

その後ろをニヤニヤしながら、慎が

明かりを燈しながら付いて行った。

 

俺は「淳、足元気つけろよ!」と言い、

慎に続いた。

 

いざ山に入ると、昔と景色が

変わっていることに驚いた。

 

いや、景色が変わったのでは無く、

俺達がデカくなったから

景色が変わって見えているのか?

 

登山途中、慎が淳をからかうように、

「中年女がいたらどーする?

俺、お前置いて逃げるけど♪」

 

などと冗談ばかり言っていた。

 

思いのほかスムーズに進め、

30分程であの場所に到達した。

 

(続く)呪う女 18/18へ

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