祖母から貰ったアンティークドール
これは、人形にまつわる不思議な体験談。
俺は中学の入学時、お祝いで祖母から『アンティークドール』を貰った。
古いドールだったが、しっかり手入れされていたので、汚いという印象は受けなかった。
それどころか、銀色の髪と白を基調としたゴシックドレスが特徴的な、とても美人なドールだ。
「この子はタツヤの事がとても気に入ったみたいだから大事にしなさい」※名前は仮名
そう祖母に言われたのと、とても高価そうなドールだった。
なにより、俺自身が何故かそのドールを非常に気に入った事もあって、俺はそのドールをとても大切に扱った。
俺を守ってくれている
それから1年くらい経ったある日、変な夢を見た。
夢の中で、件のドールを15~18歳くらいにしたような見た目の少女が現れ、俺に1回お辞儀をして去っていった。
俺は悲しくて何度も行かないでと叫ぶのだが、その子はそのまま行ってしまう。
その子の姿が見えなくなった時、目が覚めた。
時刻は朝の5時30分くらいだった。
不安になった俺は、ドールを飾っている棚の方を見たが、ドールには特に変わった様子はなかった。
ただ、やはり夢の事が気になったので、二度寝はせずに、いつも以上に丁寧にドールの手入れをして、箱に入れてから学校に行った。
その日一日をいつものように学校で過ごした帰り道、歩いているといきなり何かに背中を押され、勢いよく前に転んでしまった。
その直後、さっきまで自分がいた所に大きな木が倒れてきた。
前日に雨がかなり降っていたので、地面が柔くなっていたのだろう。
危なかった・・・と思いながら、そのまま帰宅した。
家に着き、手を洗ってから箱の中のドールを取り出そうとしたが、中のドールを見た瞬間、俺は固まってしまった。
壊れていた。
それも、かなり酷く。
訳が分からなくなった俺は、しばらく後に帰ってきた母に相談した。
そして母から祖母に話がいき、祖母の知人の人形の修復が出来る人に見てもらうと、損傷が激しいのと、古いドールゆえに修復は無理だと言われた。
悲しくて泣く俺に祖母は、「この子はタツヤの事が大好きだったからね。タツヤを守れてきっと安心しているよ」と言って慰めてくれて、その後に祖母の薦めで土日の休みの日に人形供養寺にドールを持っていった。
その時、寺の住職さんも祖母と同じようなことを言っていた。
人形供養寺にドールを供養してもらった日の夜、また件の女の子の夢を見た。
彼女は悲しむ俺を抱きしめて、何かを渡した。
ソレが何だったのかは分からない。
なぜなら、渡された直後に目が覚めてしまったからだ。
ただ何となく、彼女は俺の守護霊になって今も俺を守ってくれているのかな、と思った。
(終)
渡されたものには、どっかの住所とともにこう書かれていた。
『ようこそ、人形者の世界へ』