廃墟病院で起きた怪奇現象
俺は廃墟が大好きで、暇を見つけては探索しに行っている。
連休中、廃墟に泊まってみようと思い、キャンプ用品や酒を用意して廃墟になっている病院へ向かった。
着いたのは昼の3時くらいで、陽もまだ高かった。
しばらく病院内を散策していると、子供の笑い声と共に何かを壊すような音が聞こえた。
何かが来たのは確かだ
近所の悪ガキ共が廃墟であるのをいいことに暴れ回っていると俺は判断した。
廃墟が壊れるのは時の経過による風化だけではなく、子供やチンピラが暴れることにも起因するんだなと俺はしみじみと思った。
俺はガキ共の騒ぎ声から遠ざかり、病室の一つに入って酒盛りを始めた。
陽が落ちた頃にはガキ共も帰ったようで、俺はランタン片手に廃墟をくまなく歩き回った。
数時間ほど歩いて腹が減った俺は、先程の病室に戻ってコンビニの握り飯を食べ、焼酎をかっくらって酔いで眠くなったので寝袋で寝ることに。
夜も更けた頃、俺は寒さで目を覚ました。
酔いもすっかり覚めていて、体も冷えきっていた。
小便がしたくなった俺は、病院から出て用を足した。
すると、病院に戻る途中で笑い声が聞こえた。
子供の声だ。
同時に、何かを壊す音が鳴り響く。
昼間に聞いたのと同じ音だ。
寒いのに嫌な汗をかいた俺は、急いで病室に戻った。
笑い声と破壊音は絶え間なく響き、それは俺の居る病室に近づいて来るような気がした。
荷物をまとめた俺は眠気もすっかり覚め、息を潜めながら音を耳で追っていた。
やがて、隣の病室でけたたましい音が鳴り始めた。
子供達の狂ったような笑い声は絶叫に変わっていた。
普通の人間ならすぐに喉が潰れてしまいそうな、拷問でも受けているかのような、そのおぞましい叫び声に俺は震えた。
コンクリートの壁に何かが打ち付けられる度、振動が伝わってきた。
逃げ出すタイミングを計っていた俺は余裕が無くなり、ランタンだけを持って脇目も振らず駆け出した。
病院から少し離れた所で、俺は一度振り返った。
病室の窓から俺の荷物らしき物が放り出されているのが見えた。
一切の明かりも見えなかったが、あの病室に”何か”が来たのは確かだ。
以後、夜の廃墟には近寄らなくなった。
(終)