夜釣りで遭遇した奇妙な出来事

これは、日本昔話の中にある『イワナの怪』によく似た実際にあった話。

知人の釣り好きのおっさんが、友達７～８人と奥多摩だかへ釣りに行った。

夜釣りをするので、夕方に持参の弁当で腹ごしらえをする。

そろそろ薄暗くなる頃、食べながらふと見ると、近所の子供なのだろうか、男の子が一人木の間隠れにうろうろしている。

恥ずかしそうにこっちを覗いたり、隠れたり、モジモジしている。

釣り上げたイワナの腹から

仲間の一人が、「腹減ってんの？これあげるから、もう帰んな。おうちは近いの？」と聞きながら、おにぎりを渡した。

男の子は頷きながら近寄ってきて受け取ったが、姿かたちに違和感のない５歳ぐらいの普通の子だった。

奥多摩は考えられないような山奥にも人家があるので、みんな気にしないで釣りを始めた。

それぞれに釣果があり、夢中になって時間を忘れた。

深夜になり、アガリも一段落した頃、仲間の一人が大きくて形の良いイワナを釣り上げたので、それをさばいて食べようということになった。

釣り上げた本人が得々としてナイフを入れたが、ギョッとして「おい、変だぞ！」と言う。

見ると、腹から飯粒が見え、巻いていた海苔らしき物もある。

全員が夕方の子供におにぎりをあげたことを思い出して、気味悪く思い確認したが、間違いなく飯粒だった。

具のタラコもイワナの卵とは明らかに違うものだった。

すぐさま全員が釣り上げた魚を渓流に戻し、荷物をまとめて撤収した。

それきり奥多摩には行かないし、夜釣りもしていないという。

ちなみに、知人のおっさんはマジメな人で、嫁に逃げられた他には問題がない。

嘘偽りを言う人でもなく、そもそも『イワナの怪』を知らなかった。

※イワナの怪（リンク先：ピクシブ百科事典）

（終）