ロッカーをあさる見覚えのない女子生徒

ロッカー

 

これは、私が通っている高校の演劇部の部室であった話。

 

私は演劇部で部長をしているので、一人で遅くまで部室に居ることがある。

 

ある日、いつものように部室に残っていたら、ふと”人の気配”を感じた。

 

見ると、部屋の入り口にあるロッカーが開いていて、制服を着た女子生徒が何かを探していた。

 

ロッカーに上半身を入れて、ガサガサとあさっている。

 

しかし、その姿に私は見覚えがない。

 

部屋に誰かが入ってきてロッカーが開いても気づかない自分にもビックリしていたのもあり、私はドキドキしていた。

 

「どうしたの?忘れ物かなんか?」

 

とりあえず問いかけたけれど、返事はなし。

 

私は立ち上がり、その子に近づいた。

 

そして背後に立ち、そっと背中に手を当て、「ねぇ?」と問いかけた。

 

すると、その子はロッカーをあさる手を止め、上半身を折り曲げた状態のまま、こちらを振り返ることもなく出て行ってしまった。

 

まるでお婆さんの様に、そのまま腰を90度近くも曲げたまま暗い廊下を歩いて行った。

 

その子が誰だったのかは未だに分からない。

 

それに、時間も確かにまだ18時前だったのに、あまりに暗い廊下だったので時計を確認すると、いつの間にか21時だったのが不思議でならない。

 

(終)

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