病院夜勤時の巡回で起きた怪奇な出来事
これは、以前勤めていた病院での話。
そこでは夜勤帯は交代で巡回し、看護室に一人は残る決まりになっていた。
同僚看護師の堀田さん(仮名)が巡回に出た後、私は廊下側の窓のカウンター机で本を読もうとしていた。
その時、窓の向こうに『人の気配』を感じて顔を上げたが、堀田さんはいなかった。
見知らぬ女
患者がうろついているのか?と思い、私は廊下に出てみたが、誰もいない。
すると、廊下の先で堀田さんが振り返ってこちらを見ていたので、私は「何でもない」と手を振った。
堀田さんはそのまま歩き出してT字の廊下を曲がった時、彼女の後を付いていくように女が現れた。
女は音もなくスーっと滑るように移動していた。
私は一瞬固まったが、急いで堀田さんを追いかけた。
しかし、T字の廊下に着いて堀田さんが曲がった方を見ても、なぜか誰もいない・・・。
2つの病室を覗いても、堀田さんも女もいなかった。
ちなみに、反対の方向は検査室などで病室はなく、非常階段もこちら側。
私は事態を別病棟に連絡しようと看護室へ向かった。
そして看護室のドアを開けようとした時、T字の廊下から堀田さんが現れた。
女は廊下を真っ直ぐに滑っていった。
確かに、ついさっき見た時はいなかった二人。
堀田さんは貧血を起こしたような顔色で、「少し横になる」と言って眠ってしまった。
その夜、私の仮眠はなくなった。
また、T字の廊下から先は巡回できなかった。
外が明るくなってきた時、私は泣きそうなくらい嬉しかった。
夜勤明けの次の日、堀田さんはしばらく病欠に入ることになったと知らされ、私は夕方に事務長から呼び出され、経緯を話すと口止めされた。
そして、堀田さんは結局そのまま姿を見せず辞めてしまった。
(終)