次男の親父は亡くなった長男の生まれ変わり
これは、現在50歳の親父が子供だった頃の話。
当の親父はオカルト否定派な上、何も覚えていないそうで、この話は親父の母である祖母から聞いたそうだ。
親父には姉が一人いるのだが、実はその姉の上に4歳の時に不慮の事故で亡くなった男の子(長男)がいた。
長男は親父より7歳年上なので、彼が亡くなった3年後に親父は生まれた。
そして、長男と次男の親父には首の後ろに逆三角形の三ツボクロがあったので、「生まれ変わりじゃないか?」と家族は冗談半分でよく言っていたらしい。
不思議な言動が多々あった
だが、家族が本当にびっくりしたのは親父が2歳の時。
ある日の夕食時、親父が突然「ダンボ、ダンボ」とゴネ出したのだ。
ダンボとは、長男が大好きだった『でんぶ』のことで、長男は何故かでんぶをいつも「ダンボ」と言っていた。
この時、親父はまだでんぶというものを見たことも食べたこともなかった。
その他にも、祖父に「パタパタ行く」とねだったり。
ちなみにパタパタとは、公園の足漕ぎボートのことを長男はこう呼んでいた。
長男のお気に入りだったが、親父はまだ見たことがなかったという。
また、散歩の途中で長男がよく行っていた駄菓子屋の方向を指差し、祖父を引きずるようにして一度も行ったことのないその店に直進したり、長男が好きだった絵本の『まいごのチロ』を見たがっては、祖母に「チロは?チロは?」と聞いてきたり。
どう考えても、生まれ変わりとしか思えないような言動が多々あったそうだ。
親父のこうした言動は4歳に入ってから徐々に少なくなり、5歳の頃には全く無くなって親父自身の好みや性格がハッキリしてきたという。
「最初は長男がまとわりついていたけれど、満足して自然と離れていった感じがする」
そう祖母は言っていた。
俺としては、祖父と祖母の悲しみを癒すために、長男が2~3年だけ戻って来てくれていたような気もしている。
(終)