斜め後ろの席の生徒に憑いていた変なモノ
これは、僕が高校の頃に見た『よくわからないモノ』の話。
僕には霊感とか無く、もちろん幽霊を見たことなんてなかったが、ソレはハッキリと見えた。
現国の授業中だったと思う。
配られたプリントを後ろに回した時に、斜め後ろの席の生徒に”変なモノ”が憑いているのが見えてしまった。
いや、変なモノと言っても人型だったのだが、幽霊かどうかは本当のところよくわからない。
ソレは、3メートルは優に超えているであろう女性の姿をしていた。
黄色い花柄の膝丈まであるスカートに、緑色のワイシャツ、つば広の黒い帽子を被っていて、帽子の先に花のマークが入ったヘアピン2つを吊るしてあるという、とても奇妙な格好をしていた。
しかも腕が異様に長く、その腕で男子生徒を守るかのように後ろから抱き締めていた。
ソレが目に入った時、ビックリして思わず二度見してしまったが、その僕の行動を不審に思って視線を追った後ろの席の生徒には、ソレは見えていないようだった。
実際、授業が終わった後に、「窓の外に何か見えたの?」と聞かれたから。
一度視線を外してから授業中に何度かチラ見してみたが、ソレは相変わらず男子生徒を抱き締めていて、そして周囲を警戒するようにキョロキョロと見渡していた。
どうにもチラ見している僕のことには気付かなかったようだ。
何度か見ていた時に、僕と同じように男子生徒をチラ見している女子生徒がいることに気づき、目が合った。
その女子生徒にもソレが見えていたらしく、昼休みに図書室へ行った僕に付いてきて、「アレ、何?」と小声で聞いてきた。
僕もわからなかったので、「わからない」と返すしかなかったが。
結局、その日はずっとソレは見え続けたが、次の日以降は見えなくなっていた。
その後も特に何事もなく、同窓会で件の男子生徒に会った時も変わった様子はなかった。
(終)