戸締まりした奴はどこから出て行ったのか
これは、仕事仲間の不可解な体験話。
以前に仕事で、とある“山小屋の解体撤去”を請負った。
曰く、使われなくなって久しい小さな家屋だったという。
幸いにも近くまで車両が入れたので、作業自体は思ったより楽だった。
「ただ、扉や窓がどこもかしこも板で打ち付けてしっかりと固定されていたんで、それがちょっと厄介だったな。
でも妙なことに、その全てが内側から打ち付けてあったんだよ。見たところ他に出入りが出来るような箇所もなかったのに。
床板も室内から釘で止めてあったから、そっちからも出られないし。戸締まりした奴は一体どこから出て行ったんだろうな?」
訝しく思いはしたが、施主がこの話題を嫌がる雰囲気だったので、それ以上は詳しく聞かなかったそうだが。
物理的に有り得ないものが、こうして確かに存在している。
(終)
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