ベッドの下に小さな手が見えた気が
これは、半年前に入院した時の話です。
私が入院したのは、翌年3月には他の病院と合併することが決まっているほどの、すごく古い病院でした。
病室も新しい病院に比べると少なく、ベッドの空きは常に少なかったようです。
私が入院した時もベッドの空きがなく、また子供の頃からの持病でその病院によく入院していたので、「慣れている先生がいいだろう」ということもあって小児病棟に入院することになりました。
紫がかった手
病室は、2歳の子供と相部屋でした。
小児病棟の壁紙は可愛く、私は小さな子供が好きだったのでそれなりに楽しかったのですが、ベッドを起こすのがどうも上手くいかなかったのです。
ベッドは旧式で、ハンドルを回すとベッドの半分が起き上がるタイプのものでした。
ハンドルを回すと途中で何か挟んだような感じになり、またハンドルが重く、無理に回すと「ボキ」・「ぺキ」と妙な音がしました。
壊れちゃうんじゃ?と思い、看護師さんに相談しましたが、特に異常はないとのこと。
大丈夫かなぁ?と思っていたその夜、トイレから病室に帰ってきた時のことでした。
ベッドの下に『小さな手』が見えた気がしました。
紫がかった小さな手。
サッと引っ込んだその手を追い、思わずベッドの下を覗き込んだものの、誰も居ませんでした。
そのことを翌朝になって看護師さんに言ってみると、以前にベッドの柵を乗り越えて落下した女の子が亡くなる事故があったそうです。
ちょうど私が使っていたベッドでした。
もしかすると、私のベッドの下にその女の子は居たのでしょうか。
ベッドのハンドルを回した時の違和感も、もしかすると女の子がベッドの裏に張り付いていたのでしょうか。
そんな想像が膨らみ、かなり怖くなりました。
その後に病室を替えてもらったのは言うまでもありません。
(終)