ご先祖さまを墓から連れ帰る儀式
これは、ある女性歌手が子供の時に、実家だか祖父母の田舎での話。
家々の周りの畑や田んぼの中には、先祖代々の墓があるような土地だそうだ。
そこではお盆の風習があり、『集まった親戚の中で一番の年少者が、夜中に提灯を持って一族の墓の前に行き、墓石に背を向けてしゃがんでご先祖さまの霊をおんぶしてから家に連れて戻ってくる』という儀式があるそうだ。
彼女がその役目の年、ろうそくの火がついた提灯だけを頼りに、怖さを我慢して家を出発した。
すると、墓の手前で火が消えてしまい、怖くなってそのまま引き返してしまった。
どうせ誰も見ていないから、と儀式通りにお連れしたことにした。
そして、仏壇の前でおぶってきたご先祖さまを降ろす動作をしてみせ、儀式を終えたかに思えた。
しかし、周りの大人たちはご先祖さまを囲んだ食事会の用意に取り掛かったが、仏壇の前に座っていたお婆ちゃんが「今年はご先祖さま帰って来ないねぇ」と呟いたそうだ。
(終)
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