旅館に泊まるのがトラウマになったワケ
これは、とある旅館に泊まった時の話。
案内された部屋には、ガラスケースに入った1体の『日本人形』が置かれていた。
おかっぱ頭で、赤い着物を着た子供の人形。
その夜、その人形が私の夢に出てきた。
異変
夢の中での場所は、その日に泊まっていた旅館の同じ部屋。
ふと布団から起きて、辺りを見回している私。
辺りは真っ暗なんだけど、だんだんと目が慣れてくる。
すると、部屋の入口付近に人形が立っていた。
暗くて人形の顔は見えないけれど、水平移動するようにスーっと私に近づいてくる。
そして目と鼻の先まで近づいたところで、私は怖くて「わっ!」と手で払い除けながら後退し、目が覚めた。
浴衣もシーツも寝汗でグッショリだった。
ゼェハァと息を吐いて、「怖かったー。何だったんだ、あの夢・・・」と思いながら、とりあえず水を飲もうと布団から出ると、妙な違和感に気づいた。
辺りを見回すと、人形が入っていたガラスケースが開いている。
そして、人形が・・・ない。
その時に初めて背筋が震えて、隣りで眠っている友人を揺り起こした。
そして明かりをつけて事情を話してからもう一度ガラスケースを見ると、いつの間にか人形が戻っていた。
ガラスケースも閉まっている。
結局、その後はもう怖くてたまらなく、フロントにお願いして毛布だけを持ってロビーのソファで寝ることにした。
それ以来、旅館に泊まるのがトラウマになってしまった。
(終)