生まれたお祝いにプレゼントされた人形
これは、幼い頃に私が体験した怖い話。
両親が結婚した時に仲人をしてくれたご夫婦が、私が生まれたお祝いに『赤ちゃんの人形』をプレゼントしてくれた。
その人形は二歳くらいの子供の大きさで、髪の毛はクリクリとした金髪に近い茶色だった。
手足の関節も動かせ、服の着せ替えやお世話ごっこなどをして遊ぶ人形だ。
今でいう、ぽぽちゃんのような人形で、実際はそれよりも大きかった。
人形の手が一緒に
ただ、ぽぽちゃんのように可愛らしい感じはあまりなく、顔立ちは洋風で、少し怖い。
人形を寝かせると、長い睫毛(まつげ)が付いた瞼を閉じ、目を瞑る。
私は物心がついた時から、この人形がなぜか怖くてたまらなかった。
たぶん可愛くないという思いから、怖さしかなかったのだと思う。
それに、そこそこ大きいこの人形は、部屋のどこに置いていても存在感があり、とにかく怖くて嫌だった。
私が小学二年の時に、親の転勤で家を引っ越した。
初めて自分の部屋が与えられたが、部屋の出入り口のドアに歪みがあった為か、パタンとは閉まらなかった。
そのドアは強めに押さないと最後まで閉まらず、ギーギーと音を立てる。
そんな閉まり難いドアの横に、この怖い赤ちゃんの人形を飾っていたのだが、怖い怖いと毎日思いながらも、なぜかずっと自分の部屋に置いていた。
そして、引っ越した家で数年たったある日のこと。
私は自分の部屋のドアを半分くらい開けた状態で、のんびりと部屋で過ごしていた。
ふと自分の部屋から別の部屋に移動しようと思ってドアへ近づいた時、半分くらい開いていたドアが自然にゆっくりと閉じ始めた。
風でドアが閉まりかけてる?と思い、ドアノブに手をかけようとした瞬間、ふと横に置いていた赤ちゃんの人形を見ると、人形の手がドアが閉まる速さと連動しているかのように同じ速さで動いていた。
私は状況を一瞬で把握できず、怖くてすぐには動き出せなかった。
・・・が、「ヤバイ!」と思った途端、ドアが完全に閉まりかけそうになる瞬間に勢いよくドアを開け、母の元へ飛んで逃げた。
パニック状態で母についさっき起きた状況を説明し、「とにかくあの赤ちゃんの人形が怖い」と訴えた。
私のあまりのパニックぶりに、母はその時は面白半分で笑っていたが、人形を別の部屋に移動してくれた。
その後、人形は場所も取るし私も怖がるからと、しばらくして父方の祖父母の家の物置に持っていった。
今も物置を探せばその人形はあると思うが、また目にするのも怖く、処分するにも人型の人形ということもあってその気にもならない。
それに、あの時の「ギーギー」と音を立てながら不自然に閉まり始めるドアと、それに合わせて人形の手も一緒に動いていた光景が、今でも忘れられず恐怖しかない。
(終)