人気もあり状態も良いのにやたらと安い車
これは、俺が学生の頃に中古車屋でバイトをしていた時の話。
今から30年近く前のことなのでオークションなんてものはなく、知り合いの同業者から売れそうな車を買って来ては自分の所で売ろうと車を仕入れていた店長。
そして、いつものように仕入れた車を先方の店へ取りに行った時、かなり車検が残っていた。
おまけに走行距離も少なく、状態も良い。
しかも、その当時では人気のあった車種なのに、やたらと安い。
俺は「おかしいな・・・」と思いつつ、自分の店までドライブした。
さっさと車から出て!
頃は真夏なのに、「なんかエアコンがよく効く車だなぁ。さすが高級車!」という感じで車内は涼しかった。
道中では何かお香のような匂いがしたが、車用のコロンだと思っていたので気にならず。
そして店に戻って来た瞬間、事務の女子の一人がこちらをじっと見て、真っ青な顔をしていた。
ちなみに、この女子は霊感がある。
女子は猛ダッシュでこちらに来るや、いきなり塩を撒いてきた。
それも土俵入りのような勢いで。
さらには絶叫までしていた。
「○○さん、その乗ってきた車、どこから持って来たのよ!!」
「いや、普通に社長が買ってきた車だけど?」
「助手席に青白い顔の女が乗っていて、今にも取り憑きそうよ!さっさと車から出て!」
車から出ると、どっと疲れが出た。
俺は有り得ないくらい疲れていた。
そして女子は車から出ようとしている俺に向けて、また塩を撒いた。
恐ろしくなって振り向くと、女子は車に向かって土俵入りをしていた。
俺は怖くなり、その日は早々に帰宅した。
翌日、恐る恐る件の車のグローブボックスを開けると、そこには線香が入っていた。
そして助手席の下にはドライフラワーになった花束を見つけた。
(終)