結婚間近の彼が首を括ってしまった時に
私の母は湯灌の仕事をしている。
※湯灌(ゆかん)
葬儀に際し、遺体を入浴させ、洗浄すること。簡易には遺体を清拭することで済ませる場合もある。(Wikipediaより引用)
特に霊感のようなものはないらしいが、仕事柄、たまに不思議な出来事に遭遇するという。
そんな母から聞いた話の中で印象に残っているのが、自殺した人の湯灌に行った時のことだ。
亡くなったのは農家の20代の息子さんのマナブさん(仮名)で、身体の弱いお父さんに代わって一人で頑張られていたとか。
動機は分からないが、結婚間近の彼女もいるのに首を括ってしまい、私の母が呼ばれて行った。
母が農家のお宅に着くと、遺された家族はみんな泣き叫んでいた。
特に彼女さんは『発狂』という言葉がピッタリなくらい泣き叫んでいたらしく、たまたま亡くなった息子さんが私と同い年だったこともあって、思わず母も涙ぐんでしまったそうな。
そんな中、化粧や衣装の着せ替えなど、お仕事を進めていた。
だが、だんだんと彼女さんの様子がおかしくなってきて、「マナブが今そこに立ってる・・・」と、何もない所を見ながら話を始めた。
母は、「あまりのショックで頭がおかしくなったんやな・・・可哀想に・・・」と最初は思っていた。
しかし、身体の弱いお父さんが、「お前がおらんようになったら、これから草刈シーズンやのにどうすんねん・・・。俺、混合油の作り方も分からんねんぞ・・・」とポツリと呟いてから、場の雰囲気が変わった。※混合油とは、草刈機を動かすのに使う燃料。
「マナブがこう言ってるよ。納屋の奥から△番目の棚の段ボールに作り置きの油を置いてあるからって」
見えない何かと会話をしていた彼女さんがそう呟いた。
その後、お父さんが納屋を見に行ったところ、「ほんまに作ってくれてあった・・・」と、作り置きの油を持って戻って来たという。
母は家に帰って来るや、「今日は怖かったわぁ」と、この話をしてくれたが、怖いというよりは何か切なく感じた。
~ 以下、補足に続く ~
補足(管理人より)
どんな心境だったか分かりませんが、息子さんは衝動的に死んでしまったのでしょうか。
なんとも切ない話です。
家族に恨みがあった風でもない。
積み重なっていく責任、将来への漠然とした不安、そんな中での疲労のピーク前後が一番危ないと聞きます。
なんでも、そういう時は『タバコ』が効くそうで。
ただ、お酒はお薦めしません。
実際に、喫煙者の自殺率はかなり低いようです。
ちゃんとしたデータはありませんが、誰も言わない”不都合な事実”だとも。
お酒は飲み込み、“煙は吐き出すから”だとも。
ウソのようですが、本当のようです。
タバコを吸わない人でも、もし人に嫌なことを言われたら、その場で唾を吐けばストレスは溜まらないそうです。
これについては、TV番組『ホンマでっか!?』で沢口教授(生物学者、脳科学評論家)がそう発言しています。
ただ、「そんなこと出来るか!」と出演者の皆に突っ込まれていましたが・・・。
(終)