怪談話をしていると霊が近寄り炎は丸くなる
これは私が高校卒業の時に体験した、ほんのり怖い話です。
卒業式を終えて2~3日後だったと記憶しています。
卒業してみんなが離れ離れになる前に宴会をしよう、ということになりました。
級友の中にお寺の息子の加藤君(仮名)がいて、そこには広い座敷があるというので、20人近くでそこに集まって宴会をしました。
そのお寺は母屋と本堂が繋がっており、私達が宴会をしていた部屋は本堂の隣にある16~20畳くらいの広さでした。
宴会が盛り上がってくるうちに場所がお寺だったこともあり、私を含めたオカルト好き8人ほどで「怪談をしよう」ということになりました。
そこで、その部屋と襖を挟んだ隣の8畳くらいの部屋へ移動し、雰囲気を盛り上げるために明かりを消して部屋の真中にロウソクを1本立てて火をつけ、その周りに車座になって一人ずつ怪談を語り合うことにしました。
怪談はまあありきたりなもので、学校にまつわる話や知人から聞いた話、あるいは自分で体験した話などでした。
最初は隣の賑やかな宴会の音が伝わってきて、「イマイチ怖くないね」なんて言っていましたが、話が進むに連れて、だんだんと怪談に集中してくるようになっていきました。
そのうち、母屋の2階の方から人が歩く音が聞こえてきました。
ただ、そのお寺の家族が母屋の方にいたので不思議に思うこともなく、さらに怪談を続けました。
すると、人の歩く音がだんだんとこちらに近付いてきて、私達のいる部屋の上で歩き回り始めました。
私は少し前にトイレへ行った時に加藤君のお母さんが洗濯をしていたのを見ていたので、洗濯物を干しているんだなと思っていました。
その時、加藤君が何とも言えない表情で、「また俺が怖い話をしよう」と言い出しました。
「おお、いいね!それは聞きたい」とみんなが応えました。
「よく怪談をしていると霊が近寄ってくるって言うよな」
「それはよく聞く話だけど本当かなぁ」
「このロウソクの炎を見てみろ」
見ると、普通は長細いはずの炎が妙に丸くなっていました。
「ロウソクの炎が丸くなる時は霊がすぐそばにいるんだ」
「嘘でしょ?」
「嘘じゃないよ。ちゃんと証拠もあるし」
「またまた~。証拠って何よ?」
「今な、2階を誰かが歩いているだろ」
「あれは加藤君のお母さんが洗濯物でも干しているんでしょ?」
「あのな、この部屋の上に2階はないんだよ」
「・・・・・・」
いつの間にかロウソクの炎はさらに丸みを帯びていて、真円に近くなっていました。
そして突然、上から「ドン!」と大きな音がしました。
その瞬間、私達は悲鳴を上げながら襖を勢いよく開け、隣の部屋に逃げ込みました。
(終)