人が死ねば生まれた村で埋葬する慣わし
これは、知り合いから聞いた話。
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。
「南の、もの凄い山奥なんですけどね。
その辺りでは人が死ぬと、生まれた村で埋葬するっていうのが慣わしなんです。
基本的に土葬なんですが、近代では当局が火葬をするように指導しているそうで。
でも彼ら、土葬じゃないと嫌だ!って言うんですよ。
火葬じゃ幸せになれない、あの世へお金も持っていけないとか言って。
なので、埋葬時に紙で出来たあの世用のお金とかを一緒に棺に入れたりしますから。
火葬じゃ確かに燃えちゃいますね。
そこで、やっぱり死体を売買しちゃったりするそうで。
買った方の死体を火葬にしてから本人の亡骸はこっそり土葬する、そんな裏技をよく使うそうです。
いやぁ困ったものですね。
他所の離れた土地で死んでしまった人はどうするんでしょう?
何の気なしにそう聞いてみたところ、ビックリするような返事がありました。
『仕方ないから、生まれた土地まで出来るだけ持って帰るようにする。
でも担いで帰るのは大変だから、死体を自分で歩かせて帰るんだ。
そんな技を使う道術士が邑に一人はいるから』って」※邑(ゆう)古代の集落の総称
それって、まさか霊幻道士ってヤツですか?
実在するんですか?
驚いた私がそう口にすると、苦笑しながら彼は答えた。
「さて、どうでしょう。
実際に本人に会ったわけではないですから。
そこの道士は日本人が嫌いだったらしく、『会うな』と助言されましたし。
それに、『あんたが会いに行ったら殺された後で扱き使われるぞ』ってね」
(終)