通い慣れた山道を歩いていたはずが
これは、奇妙で不思議な体験話。
高校生の時、県の登山大会が母校で実施された。
そして山岳部だった私は、何校かの生徒を引率することになった。
近場の山を二つほど経由して、最終的に母校のグラウンドへ誘導するのが任務だ。
部員たちだけで予行演習も行い、準備は万端だった。
当日、通い慣れた山道を先頭に立って歩いていると、違和感を覚えた。
何かがおかしい・・・。
慌てて確認すると、自分が道を派手に間違えていることに気が付いた。
何処でどう間違えて、また自分がどうしてそれに気が付きもしなかったのか。
全然わからない。
その時、山の何処かで誰かが笑うのが聞こえた。
“私のことを笑っている”というのが、不思議なことにこちらに伝わってくる。
さらに不思議なことに、他の生徒にはその声は聞こえていなかった。
「化かされて道を間違えたと言っても、誰もまともに聞いてくれないだろうな」
ひどく情けない心情で、皆に謝りながら道を引き返した私だった。
(終)
スポンサーリンク