今日は誰をお呪いで?
これは、呪いにまつわる体験話。
私は仕事柄、色んな街へ行く。
その時には看板などをちらっと見たりするのだが、中には結構面白いものもあったりするので、わりと楽しみの一つになっている。
ある時、某県道を車で走っていると、妙な看板を見つけた。
『この先 ・・・m ・・・屋』
ただ、”・・・”の箇所は掠れていて読めなかった。
こんなにも掠れているのにほったらかしているのか?と少し疑問に思ったが、そんなこともあるか、とすぐに頭を切り替えた。
そして帰りに再びその近くを通ると、今度ははっきりと読めた。
『この先 100m 呪い屋』
仕事終わりで疲れもあったのでぼーっと見ていたが、すぐに興味が湧いてきた。
一体どんな店なのか?と、冷やかしに行ってみることに。
着くと、本当にそういう名の店があり、外ののぼりには『呪い請け負い』と書かれてある。
不気味ではあったが好奇心に負けて店内に入ると、本屋の店員でもしていそうな、ごく普通の見た目の店主がいた。
店内を見回してみると、それっぽい道具は見当たらないし、まるでカウンターだけのシンプルな飲み屋のようだった。
「いらっしゃい。今日は誰をお呪いで?」
声をかけられてビクッとしたが、私はまた嫌な好奇心を働かせてしまった。
「あ、あの…(誰がいいかな…せや!)上司を呪うのは可能ですか?」
「ええ、できますよ。上司さんの写真とか、ありますか?」
「携帯で飲み会の時に撮ったのが確か…」(上司が一発芸をしたのを撮った写真があった)
「はい、それで大丈夫ですよ」
店主に写真を見せると、それをじーっと睨み始めた。
しばらくして、口を開く。
「どの程度で?」
「じゃあ、軽めで」
「はい」
スッと目を細めてから、「はい、できましたよ」と。
「え、終わり?」
「はい」
件の上司は、この翌日から1週間ほど会社を休んだ。
理由は「食中毒になったから」だった。
あとがき
場所を某県と濁してあるが、参考までに『S賀県』とまでしか言えない。
佐賀か滋賀か。
特定せず、あえて2択にさせてもらう。
なぜなら、もしそのせいで私が呪われたら怖いし、もうその店が無くなっているかもしれないから。
ちなみに、2014年頃の話。
(終)