悪ふざけが大好きな姉が墓場にて
これは、俺が子供の頃の話。
オカルト雑誌なんかがよく出ていた当時、『呪いの家』として祖母の家が載ったことがある。
祖母の家系は代々墓守なので、墓地のド真ん中に平屋があった。
その家は築100年に近い木造平屋建てで、トイレはボットン、風呂は別棟。
上下水道の普及で使わなくなった枯れ井戸まであるもんだから、呪いの廃屋に見えたのだろう。
噂の実情は・・・
そんな記事を、従兄弟が爆笑しながら見せてくれたんだ。
詳しくは憶えていない。
ただ、「これ、ばあちゃんちじゃね?」と、腹が引き攣るほどに笑ったのを憶えている。
記事はといえば、ありきたりな内容だった。
幽霊が出るとか、呪われているとか。
もちろん、そう噂されるようになった裏話がある。
祖母の家は元々そのような立地から、近所に住む悪ガキ共の肝試しやらで、夏場は結構荒らされていた。
そんなこともあり、「毎年荒らされちゃたまったもんじゃねえ」と、祖母と自治会の大人たちが一計を案じた。
その計画とは、「当時15歳の姉に真っ白なワンピースと黒髪ロングのウィッグを被せて、夜の墓場で好きにしろ」と。
この姉、実は悪ふざけが大好き。
そんな姉は早速、埋め立てた井戸の中から貞子のように這い出たり、墓石に縋って泣き真似をしたり、ゾンビのような足取りで墓場を徘徊しながら『かごめかごめ』を歌ったりと、本当に好き勝手に近所の悪ガキ共を脅かしていた。
次第にそのガキ共を発端に、「あの墓場には女の幽霊が出る」、「顔を見たら呪われて殺される」、「あれはとんでもないレベルの怨霊らしい」と、効果は覿面(てきめん)だった。
そうして5年が経った頃には静かな墓場に戻った。
それが記事になり、もちろん化けていた姉のことも書かれていた。
ただ、その記事が掲載された時には、もう家の老朽化が酷くて祖母は引っ越した後で、本当の廃屋になっていたのだが。
当の姉はその記事を読んで、「どうやら姉ちゃんはとんでもない怨みを残して死んだ怨霊らしいわ。ガハハハ」と大爆笑していた。
俺は実情を知っているから怖くも何ともなかったが、正直、特殊メイクをして幽霊に扮した当時の姉を夜中の墓場で見たら失禁する自信がある。
(終)
思い付い姉ちゃんのノリを許した、婆ちゃんと自治会の大人たちも大概ノリがいいと思うんだが。