ベルの鳴る夜と忘れられた自転車の結末
私は駅などに放置してある自転車を撤去する仕事をしているが、これはその保管所の管理人さんに聞いた話。
保管所の隣にあるお宅から、夜中にベルの音がしてうるさいという苦情があったそうで。
詳しく聞いてみると、毎日ではないが夜中に「チリンチリン」とベルの音がして気になって眠れない、とのこと。
とりあえずその場は謝罪して原因を調べるということになったが、約500台の自転車を全て調べることも出来ず、風の強い日に回ってみたりしていた。
何日か後、隣のお宅の人が事務所にベルが鳴っている様子を撮影した映像を持って来られた。
それには確かにベルの音が入っていたそうで。
その映像で大体の場所がわかったので、管理人さんは夜中に行ってみた。
すると、確かに「チリンチリン」とベルの音がする。
音の出どころは、子供用のマウンテンバイクのベルだった。
ただ、風もないのにベルのバネの部分が揺れているのを見た時はゾッとしたそうで。
翌日、その自転車を調べると、それは駅の駐輪場の中で1ヶ月以上放置されていたものだった。
この場合は長期放置とされ、持ち主のへ連絡はあまりされない。
幸い、その自転車には名前も電話番号も書かれていたので、すぐに連絡をした。
すると相手がとても驚いたので事情を聞いてみると、その持ち主の子供はそこに自転車を止めた後、遊びに行った先で交通事故で亡くなってしまったそうで。
遺族の方が自転車をずっと探していたが、いつもと違う場所に止めていたようで、見つけられなくて諦めていたとのこと。
その日のうちにご両親が取りに来られ、とても喜んでいたという。
(終)