彼らはずっと繰り返すのでしょう
これは、奇妙な出来事に遭遇した話。
その時、雨が降っていました。
時刻は夜11時を過ぎた頃だったと思います。
コンビニでの買い物帰りに踏み切り前で待っていると、いつの間にか周囲には沢山の人が集まっていました。
ああ、パチンコの帰りとかかな。
そう考えて気にはしなかったのですが、だんだんと列車の近づく音と共に異変は起き始めました。
遮断機の前で待っている数人が、一人、また一人と遮断機をくぐり中へ入っていくのです。
そして、急いで通り抜けるわけでもなく、線路に横たわるのです。
周りにはまだ人がいるというにも関わらず、不思議なほど静かでした。
私は止めることも忘れて呆然としてしまっていると、列車がやって来ました。
その直後、顔を弾く風圧と共に、彼らの姿は消えてしまいました。
しかし、それだけではありませんでした。
通り抜ける列車へ、周囲にいた残りの人たちが一斉に飛び込んでいったのです。
何が起きているのか全く理解できません。
私は目の前が真っ白になってしまい、動くことができませんでした。
そして遮断機が上がる気配に、ようやく我に返りました。
周囲には真っ二つに裂けた遺体や、砕け散った肉片が…。
しかし、そろそろ私も気づいていました。
彼らは『人』ではないと。
彼らは列車の音が消えていくと共に立ち上がり、また元の位置へと帰っていきました。
そして、また次の列車を待つのでしょう。
壊れた身体のまま、遮断機の外で立っているのです。
彼らはずっと繰り返すのでしょう。
自分が既に死んでいることに気づかずに。
(終)