夜の海で波乗りする白い奴

去年の9月頃、

 

先輩と二人で、

日本海にサーフィンに行った。

 

一応、フル装備で行ったが、

水温が予想外に冷たく、

 

寒いと言うより痛いだった。

 

俺と先輩はサーフィンを断念し、

カニでも喰いに行こう!と、

 

近くのカニ鍋を出してくれる

民宿に泊まる事にした。

 

風呂で暖まった後、

 

夜の海が見える部屋で

酒を飲みながら喰うカニ鍋、

 

最高だった。

 

二人ともほろ酔いに

なりかけの頃、先輩が

 

「おいおい!こんな時間に

波乗りしてる奴おるぞ!」

 

と。

 

俺は、「んなアホな!」

と言いながら海を見た。

 

すると、

 

確かに海にポツンと、

白いスウェットスーツを着た奴がいる。

 

しかし、時間はすでに

夜の10時を回っている。

 

「あいつ、何してんすかね?」

 

と俺は言った。

 

先輩はその『白い奴』を

ジーっと見つめたまま黙っていた。

 

俺は、

 

「あいつ寒くないんすかね?

っつーか、暗くて波見えんっしょ?」

 

と言った。

 

その時、先輩が、

その『白い奴』を見ながら、

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァァ!」

 

と、気持ち悪い声を

出し始めた。

 

俺は何のギャグだ?と思い、

先輩を見た。

 

先輩は一点(白い奴)

見つめながら、

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァァ!」

 

と、不気味な声を

出し続けた。

 

俺は先輩に、

 

「いやいや、何の真似っすか?」

 

と聞いても、

 

返事どころか、

その奇声をずっと出し続ける。

 

俺は訳が分からず、

 

とりあえず先輩の

両肩を揺すり、

 

「ちょっ!先輩!」

 

と言うと、先輩は

 

「ギヒィィィィィ!」

 

みたいな、

甲高い声を出す。

 

泡を吹きながら、

その場に仰向けに倒れた。

 

急性アルコール中毒かと思い、

慌てて誰かを呼ぼうとした。

 

その時、『キィーン』と、

 

凄い高い音と共に、

頭痛がした。

 

頭の中で、

鉄琴を叩かれたような。

 

俺は頭を抱え込み、

うずくまった。

 

その音が段々と

高くなってくる。

 

そして、

 

頭の中にその高音と共に、

凄く低い男の声で

 

『おーい・・・おーい・・・』

 

と聞こえてくる。

 

俺は頭を抱えながら、

何気に窓の外を見た。

 

すると、

 

さっきの白い奴が

海の上(海面)に立ちながら、

 

気持ち悪い動きで、

こちらに向かって歩いている。

 

まるで、操り人形のように

全身の骨が折れたような、

 

人間とは思えない動きで、

少しずつこちらに歩いていた。

 

俺は本能的に『ヤバイ!』

と思い、

 

とっさに卓上の食器やコップを

壁に蹴りつけた。

 

ガシャーン!

 

食器などが割れる音に気付いた

民宿の従業員が駆け付けてくれ、

 

それと同時に頭痛が消えた。

 

先輩は気を失っていた。

 

民宿の従業員は

すぐに救急車を手配し、

 

駆け付けた救急隊員に

「食中毒の恐れがある」と言われ、

 

先輩と一緒に俺も、

救急車に担架で搬送された。

 

救急車の中で隊員に、

 

「何か生の物を食べたか?」

 

とか色々聞かれたので

ありのままの事を答え、

 

海に変な白い奴が

居た事も報告した。

 

すると、

 

三人いた救急隊員は

何か気まずそうな雰囲気を出し、

 

しばらく沈黙が続いた。

 

そして一人が、

 

「今年も出たかぁ・・・」

 

と小さな声で呟いた。

 

俺は何だか恐くなって、

それ以上は聞けなかった。

 

でも、あの白い奴が、

悪いものであることは確かだ。

 

ちなみに、

先輩はその後は元気です。

 

あの時のことを聞いても、

本人は全く覚えてないとか・・・。

 

(終)

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