エレベーターの中にいる赤い女
俺は8階に住んでいる。
仕事が忙しく、
帰りはいつも深夜だ。
にわか雨が肩を濡らすが、
気持ち良いくらいに思っていた。
ただ・・・
いつもは明るいはずの
エレベーターホールが、
やけに暗く見えた。
なぜ暗いのか、
すぐに理由が分かった。
何本かの蛍光灯のうち、
1本が切れている。
今に始まったことじゃない。
ここの管理人は仕事が遅い。
エレベーターが1階に着き、
ドアが開いてギョッとした。
中に人が居る・・・
ドアに背を向け、
じっと立っている。
赤いリボンと赤のワンピース。
・・・女だ。
乗り込むのを一瞬
躊躇したが、
乗らないのも変なので、
そっと入り込んだ。
女に背を向けた状態で、
8階のボタンを押した。
しかし・・・
ボタンがどれも押されて
いないことに気が付き、
失敗した!
と、すぐに思った。
自分の住んでいる階を、
押したくなかった・・・。
階上ランプを見つめながら、
エレベーターってこんなに
遅かったかと考えていた。
女は後ろを向いたまま、
じっとして動かない。
8階に着き、
エレベーターを降りたが、
女は変わらず、
後ろを向いている・・・。
部屋に入り、
少し落ち着いてから
シャワーを浴びた。
ビールを飲み、
2缶目を飲もうとして、
冷蔵庫が空なのに気付いた。
近くにコンビニがある。
サンダルを引っ掛け、
エレベーターを呼んだ。
ドアが開くと、
赤い女が乗っていた。
さっきと同じ格好で、
背を向けじっと動かない・・・。
今度は乗れなかった。
(終)
これは変人なのか幽霊なのか判断に迷うな・・・