不吉な噂が耐えない沼にて

沼

 

これは、

 

僕の家の近くにある、

沼のお話です。

 

その沼は、

 

近くに神社とお墓がある

絶妙な場所にあります。

 

昔から色々な噂が絶えず、

 

「あそこは底なし沼・・・」

 

「あの沼にはカッパがいる・・・」

 

「沼の近くにある女性の

蔵の前で10回転すると、

 

嘔吐するか死ぬ・・・」

 

などと、不吉な噂が

耐えませんでした。

 

それ故、

お婆さんには、

 

「絶対に近づくな!」

 

と何度も言い聞かされて

いました。

 

しかし、そう言われると

近付きたくなるのが子供です。

 

僕は友人と学校帰りに、

 

毎日その沼に寄っては

魚を見て遊んでました。

 

この友人というのが、

 

中々に度胸があるというか、

思考がおかしいというか・・・。

 

僕とその友人は

かなりの悪友で、

 

近付くなと言われても、

 

毎週土曜には午前中から

沼で遊んでました。

 

ある日、

 

日が暮れるまで遊んで見よう、

という話になりました。

 

子供にしてみれば、

 

神社やお墓や沼なんて、

いいアスレチック場です。

 

あっという間に

日が暮れ始めます。

 

暗くなったので帰ろうとしたら、

沼から「ドボンッ」と、

 

大きな石でも投げたかのような

音がしました。

 

僕は、「魚・・だよね?」

と言いましたが、

 

友人は「多分・・・違う・・」

と言います。

 

僕は一気に血の気が引き、

すぐに帰りたくなりました。

 

そしたら友人が、

 

「今のが何か知りたい?」

 

と言います。

 

正直、知りたくありませんが、

僕は「・・・うん」と言いました。

 

「じゃあ、もう少し

暗くなるまで待とう」

 

と友人は言いました。

 

完全に日が暮れ、

夜になりました。

 

その間、僕と友人はずっと

沼を眺めてました。

 

魚が跳ねて「チャポン」。

 

しかし、

 

そんな音の中に「ドボンッ」

と大きな音が数回。

 

ずっと眺めていたら、

 

気付きたくないものに

気付いてしまいました。

 

「ドボンッ」と音が鳴り、

水しぶきが上がる時、

 

水が上に引っ張られて

いるのです。

 

例えるなら、

 

お風呂で湯に浸かっている手を

思いっきり引き上げると、

 

湯が手にくっ付いて

来ますよね。

 

あれと同じ感じです。

 

そして、「ドボンッ」の

回数も多くなり、

 

不意に友人が「腕だよ」

と言いました。

 

「腕?」

 

「そう、腕。

 

ここで自殺したのか

捨てられたのか・・・。

 

たぶん上がって来れないん

だろうね。

 

腕を水から思いっきり

出せたところで、

 

掴むものが無ければ

また水に戻るだけ。

 

それが叩きつけられて

いるんだよ」

 

「溺れてるならバシャバシャ

ってなるんじゃない?」

 

「溺れてるなら・・・ね。

 

どっちにせよ、

アレは良いものじゃないよ。

 

もがいてると言うよりは、

怨んでる。

 

そろそろ君も見えるんじゃ

ないの?」

 

暗いので何とも言えませんが、

 

その話を聞かされたせいも

あるのでしょう。

 

「ドボンッ」と音が鳴る時、

確かに見えました。

 

沼の水から這い出て

また水に叩き付けられる、

 

青白い『腕』が。

 

今から思えば、

この頃からですね。

 

僕とこの友人の二人で、

 

罰当たりなことをしては

怖い目に遭っていたのは。

 

今でも友人宅に遊びに行くと、

不意に友人は言います。

 

「後ろと横に立ってるよ」

 

(終)

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