龍神様が宿っている掛け軸に悪さをすると
いつ誰が買って来たのかも定かでない、
実家にある掛け軸の話。
床の間に飾ってある、
龍神様の描かれた小ぶりの掛け軸。
訊けば、
祖母が嫁いで来た頃には
既にあったって言うから、
既に70年以上は前のもの。
この掛け軸に悪さをすれば、
良くない事が起こる。
私が5歳くらいの時だった。
お盆って事もあって、
いとこが家に泊まりに来た。
同い年の男の子で、
結構な暴れ者だった。
龍神様の掛け軸に向かって、
物を投げ始める。
うちの家族やその子の母親は、
「それは一応神様なんだから
悪さをするな」
みたいなことを言うんだけれど、
いとこは言う事を聞かずに、
掛け軸に物をぶつけていた。
そしてその夜、
その男の子が大泣きして、
その声で家族みんなが目を覚ました。
「手が・・・!手が・・・!」
と言って、
ギャンギャン泣く男の子。
見ると、
右手がパンパンに腫れていた。
その腫れ方というのが
ちょっと変わっていて、
薄手のビニール手袋に
水をパンパンに入れると、
手の平のところに水が溜まって
風船みたいになるんだけれど、
まさにそんな腫れ方だった。
救急で病院に行って診てもらったら、
右手には水が大量に溜まっていた。
案の定、
「ほら、言わんこっちゃない!
悪さをするからだ!」
と、なったんだけれど、
その翌年、
さらに暴れ者になった男の子は、
あろう事かその掛け軸を
わざと蹴っ飛ばした。
「祟(たた)りなんてねーよ!
やれるならやってみろよ!」
と、下品な言葉付きで。
すると今度は、
次の日に何も無いところですっころんで、
その拍子に右足の骨とあばら骨を折った。
どうやら龍神様は彼の言葉どおり、
『やれる事をやった』らしい。
(終)
首の骨が折れなくて良かったね