運良く空いていた話題のラブホの部屋
彼氏とラブホに行った時の話。
そこは新しく出来たばかりで、
部屋の中には夜景を一望できる
露天風呂が話題のラブホだった。
その二つしかない露天風呂のある部屋の
一つが運良く空いていて、
そこへ泊まれた。
今にして思えば、
運が良かったわけじゃ
なかったんだろうなぁと思う。
中に入ると、
部屋の真ん中に螺旋階段がある。
二階には、
ミストサウナと露天風呂。
一階にはクイーンサイズのベッドに
シャワールーム。
さらに、ドーンと白いソファに、
大きなプラズマテレビ。
すごく綺麗でお洒落な部屋に、
キャーキャー言っていた。
喜んでいる私を見て、
彼も嬉しそうだった。
買い込んだお酒を飲みながら、
ムードも最高潮。
ここまでは良かった・・・
ベッドの枕上に、
お水を飲むためのグラスなどが
置いてあったんだけれど、
それが突然動いた。
二個並んでいるうちの一個だけが、
スーッと50センチほど移動した。
自然現象とは考えられない動きだったし、
ビックリして目が点になった。
彼は見ていなかったから、
何が起こったか説明しても
信じてくれなくて・・・
結局、それからは何も起こらずで、
朝まで大丈夫だった。
気のせいだったのかなぁ?なんて、
あまり気にしていなかった。
私はキャバ嬢をしていたから、
夜になると仕事に出て、
仕事が終わると彼氏の部屋に直行した。
彼の部屋に着いた頃には、
もう朝だったから、
私と入れ違いで彼は仕事へ。
なかなか寝れないでボーとテレビを
ベッドの上で観ていたんだけれど、
姿かたちは見えなくても、
人が居る気配ってあるじゃない?
その時、
玄関から人が来る気配があった。
玄関が開く音も聞こえなかった。
だけど、てっきり彼が忘れ物を取りに
帰って来たんだと思った。
半開きになった部屋のドアの隙間から、
彼が入って来るのをベッドの上から
覗きながら待っていたんだけれど、
なかなか来ない。
あれ・・・?と思っていたら、
半開きになったドアから人が覗いた。
彼じゃない!!と思った瞬間、
キーンと凄い耳鳴りが。
さらに後ろから首に腕を回されて、
強く絞められた。
後ろにグンッと引っ張られて苦しい・・・
すると、
顔の横で小さな息遣いが聞こえる。
耳元でブツブツと小さく細い声で、
女の人が何か言っている。
私の後ろに人が入り込む余裕が
あるはずがないし、
もう、この世の人じゃないのは
なんとなく理解していた。
振り払おうと手を上げようと思ったら、
今度は金縛りで動けない。
手を動かしているつもりなのに、
全く動かない。
神経が頭からぷっつり切れている感じ。
そんなジタバタしている間も、
女の顔は耳元でずっと囁いている。
『・・・デ?ナンデ?アナタ・・・
ワタシダケガ・・・?・・・バイイノニ・・』
テレビの音と混ざって、
何を言っているのか上手く聞き取れない。
「何を言ってるの?」
約10~15分、
ブツブツ言うのに付き合わされ、
段々と貴重な睡眠時間を邪魔されて、
イライラしてきた。
「何言ってるか全然分かんないし、
何なの?
私が何かした?
私に何を言っても
何もできないっつーの!」
頭の中でグルグル考えていた私に、
『・・・ナンデ?死ねばいいのに』
と女の顔はボソっと呟く。
「うるさーい!!(怒)」
声が出たと同時に、
金縛りが解けて起き上がれた。
そこに女の姿は無かった。
だけれど、
首には絞められていた感覚が
しっかりと残っていた。
急にゾクゾクと怖くなり、
一睡もできず・・・
その夜、
彼に一部始終を話したら、
「あぁ、やっぱ居た?」
と言われ・・・
彼曰く、どうやら、
昨晩から部屋の前のリビングを
ウロウロ歩いていたんだって・・・
「ドアの隙間からチラチラと、
白いワンピースみたいのが
ひらひら見えたんだけど、
気のせいかなぁって思って(笑)」
淡々と言うなぁ!
笑えなぁい!(怒)
ほんと怖かったのに・・・(泣)
ちなみに、
この日から何も無いけれど、
やっぱりラブホから連れて来たのかな?
あの女が一体何だったのか、
今でも謎のままです。
(終)