自称管理人の男と無表情の娘
ある日、ペンキの塗り替えを依頼された部屋に、『管理人』と名乗る男と向かった。
傍らにはなぜか管理人の娘さんと思われる人が終始付いて回って来ていたが、彼女はなぜか無表情で会話もしない。
とりあえず現場の部屋に入ると凄い臭いで、作業をするために窓を開けてマスクをした。
管理人を名乗る男の目的は一体?
ペンキを塗るためには古いペンキを剥がすのだが、剥がした下から壁一面に異様な文字が現れた。
『1995年の私の誕生日』
『○○ちゃんおかしいよ』
『お腹すいたお腹すいた』
『死んだら殺してやる』
・・・・・・
他にもいろいろ書いてあったが、とにかく不気味で気分が悪くなったので、1階に降り一度建物の外に出てタバコを吹かしていた。
すると、突然知らないおじさんが、「お前ら、俺の所有してる建物で勝手に何してるんだ?あの3階の部屋の窓開けたのお前らだろ?開いているはずないのに開いているから気になって来たんだ!警察呼ぶぞ!!」と。
そんなことを一気に捲くし立てられた。
とりあえず俺は作業を依頼されただけで事情が分からなかったので、会社に電話して担当者とその見知らぬおじさんに代わり直接話しをしてもらうことに。
電話口で見知らぬおじさんは、「お前らの言う管理人とやらを連れて来い」というやり取りをしていた。
その時、ふと何の気無しに上を見ると、管理人の娘さんと思われる人が相変わらずの無表情で俺たちの方を見ていた。
電話が終わると、「3階の現場に管理人も一緒に居るから」とおじさんに伝えると、そのおじさんが先に行ってしまい、慌てて追いかけて部屋に入った。
すると、先に行ったおじさんが風呂場の前でへたり込んでいて、震えながら叫んでいた。
「ひ・・ひ・・・人殺し!!」
俺は訳が分からない。
おじさんが指差している方を見ると、真っ赤でかろうじて女性と分かるような人の死体のようなものがあった。
直ぐに警察を呼び、その場で俺たちは事情聴取されて、会社の担当者に至っては犯人扱いで拘留され、取調べまで受けたが疑いが晴れて釈放された。
実話なので細かい部分は省略するが、管理人室に凶器らしき物があり、同じ指紋が工事契約書からも出たり、管理人を語っていた男は度々目撃されていたらしい。
その事件のニュースをテレビで見ていたら、被害者の女性はあの日に現場で自称管理人の男と終始一緒にいたあの娘さんだった。
(終)