突如現れては消えた謎の六角形
去年の8月4日の事。
午前3時頃に目が覚めた。
なかなか再び眠れないので、
和室に行って携帯をいじっていた。
そして午前5時頃、
そろそろ寝ようかと迷っていると、
視界のやや上の辺りに、
青色をした人間のような存在が見えた。
この現象にどんな意味があるのか・・・
音は聞こえないけれど、
海で音楽をかけているような背景も見えた。
その存在がそこにいると言うよりは、
プロジェクターが突然現れて、
映像が映し出されているような感じだった。
驚いたけれど怖さは無くて、
むしろ楽しげな様子に和んだ。
そして数十秒後、
突如、その存在は尋常じゃなく慌てだし、
和室の天井の角をしきりに指差し始めた。
私も慌てて見たけれど、
そこには何も無いので拍子抜けしたが、
ふと携帯に視線を移した途端に、
その角から叫び声が聞こえた。
「キャアアアアアアアアアァァァァァ・・・」
長く大声を出した時に起こる特有の、
語尾の掠(かす)れまではっきりと聞こえた。
人間の息がそんなに続くわけがないくらい、
長い時間それは聞こえていた。
私は少しうんざりし始めていた。
その叫び声の原因が知りたくて、
もう一度青い存在を見ようとすると、
もう何も見えなかった。
・・・しかし、その直後、
六角形の中に『2年後』と書かれた
白黒の模様が現れた。
それが消えた頃、
時間は6時を過ぎていた。
この時点でも恐怖心は無く、
その不思議な出来事は耳や目ではなく、
脳で感じているみたいだった。
・・・とはいえ、
私の周りには怖い話が苦手な人が多いので、
誰にも話してはいなかった。
それから3ヵ月後の事。
久々に会った友達が、
唐突にこんな事を言い出した。
「昨日、メモを書いていたらさ、
書いたはずのない六角形が右端にあって、
二度見するともう消えていたんだ」
友達が見た六角形の中には、
数字の『5』とだけ書かれてあり、
その六角形の枠と文字は青色で、
他は黄色だったという。
謎の六角形は悪いものではないと思うけれど、
どういった意味があるのか気になっている。
(終)