2日ずれた別の世界に来ているのか?
もう20年近く前の事になるが、今でもよく状況が掴めていない話。
当時の俺は小学1年生で、2つ下の妹は幼稚園に通っていた。
ふたり兄妹だった俺達は仲が良くて、学校から帰るといつも一緒に遊んでいた。
年齢が幼いだけに、子供二人だけで遠くに行く事は禁止されていて、大抵は家の中で何かをし、それ以外だと家の二軒隣の空き地で遊んでいた。(その空き地は、ドラえもんによく出てくる空き地から土管を取り去ったものと想像して欲しい)
これは、その空き地での出来事。
昔の妹と今の妹
その日の遊びは『宝探し』だった。
だが、なんてことはない。
空き地の中に落ちている価値のありそうなものを探す、という遊びだった。
どちらも子供だったからモノの価値なんて分からなくて、綺麗な石やビー玉、BB弾あたりが主な収穫物だ。
「今日は負けないぞー」なんて言いながら、場所を分かれてそれぞれの宝を探し始めた。
しばらくすると、耳をつんざくような妹の泣き声が聞こえた。
慌てて近づくと、手のひらから血が出ているようだった。
血のついた光るガラス片が妹の足元にあったので、これを拾おうとして切ってしまったのだろう。
深く切ってしまったのか、結構な量の血がだらだらと流れていた。
俺自身気が動転していたのもあるだろうが、動かしてはいけない気がして、妹にそこを動かないように告げると、一人で母に助けを求める為に家へと走った。
家と空き地は二軒隣だから、子供の足でも走って10秒程で家に着いた。
しかし、すぐに母に妹の事を伝えようとしたら、いきなり抱きつかれた。
「今までどこに行っていたの!?」と涙を流しながら聞かれたから、「そこの空き地だけど・・・」と答えた。
家を出る前に母に行き先は告げていたし、出てから30分そこらの感覚だったから訳が分からなかったが、直後にさらに訳の分からないことが起こった。
母の後ろに妹がいたのだ。
その時に母から聞いた話では、俺は”丸2日間”も家に戻っていなかったらしい。
妹と二人で家を出たところまでは記憶と合っているのだが、空き地で遊んでいたらいつの間にか俺がいなくなっていて、妹は仕方なく一人で家に帰ったとの事だった。
まだ幼稚園児だった妹の証言なので、色々とあやふやな点はあったらしいが。
そして、妹の手には傷が無かった。
かすり傷程度なら2日もあれば塞がる事もあるだろうが、思い返してもそんな生易しい傷ではなかった。
妹の様子は以前と変わっていなかったが、なんとなく気味が悪かったのと、上がっていく年齢も手伝ってか、次第に一緒に遊ぶ事は少なくなっていった。
もう今となっては俺も妹もいい大人だ。
妹は当時5歳だったので、その時の事は全然覚えていないらしい。
そんな俺は今でもふと考える事がある。
あの時に一緒に遊んでいた妹は、今の妹と同じ存在なのか?と。
実は、俺は2日ずれた別の世界に来ているのではないか?と。
(終)