高速SAで体験した奇妙な現象
これは、俺が高校生の時の話。
その日、母と二人で父の実家へと向かうため、高速道路を車で走っていた。
途中、俺はトイレに行きたくなり、一番近かったサービスエリアに車を停めてもらう。
俺は用を足すためにトイレへ、母は運転席で伸びをしていた。
用を足して車に戻り、助手席側のドアを開こうとしたが、何故か開かなかった。
なんかおかしいのよ
ドアをガチャガチャしていると、母がそれに気づいて鍵を開け、そのまま中に入る。
「なんで鍵閉めたの?」
すると、母は困った顔をして俺に鍵を渡してきた。
どういうこと?と聞こうとしたその瞬間、『ガチャ』と勝手に鍵が閉まった。
えっ?!と思いながら解除スイッチを押して開けるが、数秒して『ガチャ』とまた閉まる。
「あんたがトイレに行ってから、なんかおかしいのよ。多分あれもなんだろうけど・・・」
母は渡した鍵を差してから、サイドミラーを指差す。
見ると、そこには水溜りが出来ていた。
「ここに来るまでずっと晴れてたのに水溜りなんておかしいでしょ。しかも、どんどん大きくなっているみたいだし、形が・・・」
なんといえばいいのか、水がどんどん広がっていって、その形が猫のような狐のような・・・そんな形になっていくのが分かる。
耳までしっかりと分かるほど、くっきりしていた。
「出ようか。なんか気味悪いし・・・」
「せやな」
母の一言に頷いて、母がエンジンをかけようとたその時、『ブウウウウウゥゥ!!』と防犯用のクラクションが鳴り出した。
この防犯用のクラクションは、車の鍵がかかったままドアを開くと鳴り出す仕組みで、鍵を開けるまで鳴り続ける。
一度その経験のあった俺は、すぐに鍵を開いてそれを止めた。
「なんなのよ!!」
「まずは出てからにしよう」
母はその言葉に、顔が引きつっていたが頷いて、恐る恐るエンジンをかける。
今度はクラクションは鳴らず、そのままサービスエリアを出る。しかし・・・
「ヒイィ!!」
サービスエリアを出てすぐ、母はバックミラーを見て悲鳴を上げて硬直した。
そこには、白い着物を着た髪の長い女が立っていた。
それ以来、似たような現象が起きたことは一切ない。
ただ、あの時に実は心霊体験という非日常に興奮した俺は、何度か「あそこに立ち寄ろう」と母に持ちかけるが、凄い形相で断られる。
ちなみに、現在もそのサービスエリアは営業している。
(終)