薄暗い家の中でニュッと顔だけ出すの母
これは、子供の時に不可解な体験をした話。
その日、習い事をサボり、遊んでから家に帰った。
玄関のドアを開けると、家の中はまだ夕方とはいえ、電気もつけずに薄暗かった。
そして靴を脱いでいると、台所から母が顔だけニュッと出し、真顔で私を見ていた。
今でもこの体験は謎のままに
もしかしてサボったのがバレていて怒ってる?と思い、何か言われるかと待っていると、ニュッと顔が引っ込んだ。
バレているけど後で蒸し返して怒るパターンかもと怯えていると、また台所からニュッと母の顔が。
やはり、母は真顔でジーっと私を見ている。
それに無言なのがさらに怖い。
私から謝るのを待っているんだと思い、「ごめんなさい・・・」と言うと、顔は引っ込んだ。
言い訳をしようと、自室がある2階への階段を上らずそのまま台所に行くも、誰もいない。
誰もいないどころか、電気のついていない台所はかなり暗かった。
なんだこれ?と思って振り向くと、今度は階段から母が顔だけニュッと覗かせた。
思わず「うわっ!」と声を出した私に対して、母は真顔でノーリアクションのまま顔を引っ込めた。
恐怖を感じた私は「つまんないことしないでよ!」と怒鳴ると、また顔だけを覗かせてジーっと私を見てくる。
母がおかしくなったと思った私は、台所の勝手口から外へ逃げ出したが、裸足のままでは行く場所もない。
仕方なく、また玄関から家に入ると、なぜか家の中は明るかった。
廊下も台所も電気がついていて、間髪入れずに「塾サボったでしょ!何やってんの!」と、母が怒鳴り声と共に飛び出してきた。
恐る恐る台所を覗き込むと、いつもの母がいた。
さっきまでのことを話すも、「何言ってんのよ?」と、まったく取り合ってくれなかった。
ドッキリだったのか何だったのか分からないけど、今でもあの時の体験は謎のままになっている。
(終)