妊婦が屋上から飛び降りた後の現場の怪
※閲覧注意・・・この話は特に妊婦の方やそのご家族の方の閲覧は控えた方がよいかと思います。また描写の一部に不快と感じられる場合もございます。どなた様も読まれる場合は自己責任でお願いします。
これは、当時勤務していた病院を辞める直前に起きた話。
日勤でいつものように出勤すると、職場で「飛び降りがあった!」と大騒ぎに。
その病院では糖尿病患者の散歩のために、屋上は常時施錠していなかった。(その後は時間解放になったと聞く)
飛び降りたのは、産婦人科に入院中だった妊婦さん。
妊娠中毒症で入院しており、他にもマタニティブルーや旦那の浮気やらで精神状態がよくなかったらしい。
私が病院に着いた時には、ドクター専用駐車場に落ちた遺体はすでに片付けられていた。
騒ぎも収まりかけて仕事に戻ってすぐ、警察が病棟に聞き込みに来られた。
来られたのは、制服を着たお巡りさんではなく、カジュアルなブルゾンを着た刑事さん。
私は内心「ウチの病棟は関係ないじゃん?」と思いつつ、手を動かしながら聞き耳を立てていると、どうやら誰かが遺体の側に行って何かやっていないか?ということを調べているようだった。
まさか殺人の可能性?と思っていると、隣の産婦人科病棟からもう一人の刑事さんが来られた。
驚いたことに、その刑事さんは少し前に私の従姉妹と結婚した、県警の捜査一課の義理の従兄弟だった。
会ったのは結婚式以来。
お互い思わぬ所で会ってビックリして、「あ、その節は・・・」、「いえいえ、とんでもない」と、大人の挨拶を簡単に済ませた後に少しだけ雑談した。
私「何か怪しいところでもあるんですか?」
刑「いえ、不審死は一応調べますからね」
私「不審・・・なんですか?」
刑「事故でも自殺でも、はっきりする前は全てが不審死ですから」
私「でも自殺ですよね?だいぶ精神的に追い詰められていた人みたいでしたし」
刑「さっきそのことを聞きました。そうみたいですね」
次の瞬間、急に彼が義理の従兄弟の目から刑事の目になった。
とても鋭い目で、声も2オクターブぐらい低くなり、私は少しビクッとした。
刑「ところで、本当に誰もご遺体に手を触れてないんですよね?」
私「いえ、救命できそうだったら何かするでしょうけど・・・」
刑「いや、そう言うことではなく・・・」
雰囲気は怖いままなのに、どこか困っている感じがした。
刑「飛び降りた人、まっすぐ落ちて、体の前面が真っ平らになっちゃった感じだったんですよね」
私「まあ、屋上から飛び降りたのなら・・・」
刑「その拍子かもしれないですけど、お腹の中の赤ちゃんまで外に飛び出しちゃったみたいなんですよ」
私「・・・えっ!?」
刑「破裂はしていなくて、股間から飛び出していたんですよね・・・。5ヶ月ぐらいの赤ちゃんって動くかなぁ?」
話が唐突に変わって、私は混乱気味に。
私「胎動とかはするんじゃないですか?」
刑「いや、そうではなく、ハイハイとか」
私「はいはい?」
刑「自力で動けるかって」
私「無理でしょ?」
刑「ですよね・・・」
私「どうしてそういう話になるんですか?」
刑「飛び出した赤ちゃんがお母さんの横まで移動したのかなって」
私「何かの拍子でそうなったんじゃ?」
刑「まあそうなんでしょうけど。ただ、水のような液体がナメクジみたいに上に移動していて、まるでお母さんの股間から自力で這ったみたいだったのでね・・・」
この件の後にすぐ病院を辞めたこともあり、どういう結末になったのかは詳しく知りません。
(終)