ばあちゃんは予知能力者だった
これは、とあるばあちゃんとの出会いにまつわる不思議な話。
小学校の修学旅行でのこと。
泊まった旅館でお風呂に入る為に大浴場へ皆で移動している時、向こうから三人組のおばちゃん達が歩いてきた。
ばあちゃん先に会って来た
その中の一人のばあちゃんが俺と目を合わせて唐突に、「あらぁ?うちの孫よろしくねぇ」と言った。
当然、俺も他の奴らも呆気に取られた。
そして、ばあちゃんはそのままニコニコして去って行った。
数年後、高校に入学した俺に仲の良い友達が出来た。
その友達の名前を仮に『平井』とする。
俺と平井は、いつも一緒につるんでいた。
ある日、平井の家に遊びに行くと、小学校の修学旅行の時に出会ったばあちゃんがそこに居た。
間違いなく、あのばあちゃんだった。
「あらぁ?来たの。いらっしゃい」
あの時と同じのように、ニコニコした顔でそう言われた。
「ばあちゃん、じゃぁコイツなの?」
平井は驚いた顔をしてばあちゃんにそう言った。
後で聞くと、平井のばあちゃんは何か色々と分かる人らしい。
数年前にばあちゃんが旅行に行った後に、「高校生になったらとっても長く付き合える子に会えるよ。ばあちゃん先に会って来た」と平井は言われていたようだ。
ただ、平井はいつものことだとその時は「ふぅ~ん」と流したけれど、「女だと思って楽しみにしてたのに、お前かよ!」と言っていた。
それはこっちのセリフだ。
不思議だったのは、小学生の俺に会った時、ばあちゃん夫婦は二人っきりで水入らずの旅行中だったらしく・・・。
ならば、「ばあちゃんの両隣にいたおばさんたちは誰?」ということになる。
それを聞いてみると、ばあちゃんはやっぱりニコニコしながら、「あらぁ?見えちゃった?」と言うだけだった。
(終)