砂上を這いずっていたのは男の生首
これは、友人の話。
海岸の砂浜を歩いていると、行く手からズリズリという音が聞こえてきた。
視線を上げると、スイカほどもある黒い毛玉がこちらに這いずってくる。
「何だろう、海草の生えた大っきなヤドカリかいな?」
そんなことを考えながらぼーっと見ていると、そいつがクルリと上を向いた。
目と目が合った。
砂上を這いずっていたのは『男の生首』だった。
サッと目を逸らし、見ていないフリをした。
ズリズリと何かが這う音は止まることなく、彼のすぐ横を通り抜けていく。
音が聞こえなくなってから、恐る恐る背後を見てみた。
何かを引き摺ったような痕だけが、岩の向こうに続いていた。
確かめる勇気などなくて、脱兎のようにそこから逃げ出したそうだ。
(終)
スポンサーリンク