女人禁制の山へ向かった3人の女性たち
これは、親戚のお姉さんから聞いた話。
数年前のこと、お姉さんは二人の友人と『パワースポット巡り』をよくやっていたそうです。
ガイドブックに載っているような有名なパワースポットはほとんどまわってしまい、普段では人があまり目をつけたりしないような所にまで行っていたそうです。
余談ですが、本当にそのような所がパワースポットなのか?と、私は疑問に思っていましたが・・・。
女人禁制の謂れ
その内の、ある山に行った時のことだそうです。
その場所はガイドブックに載っていないため、ネットなどで調べながら向かいました。
ただ、一つだけ問題がありました。
その山というのが『女人禁制の山』だったそうです。
ちょうど冬だったこともあり、三人は帽子を深く被り、マフラーで口元を隠して行くことにしました。
山の麓に到着した彼女たちは、その山を登り始めました。
登る道は舗装されておらず、地元の人でもあまり立ち入ったりするような山ではないと感じました。
しばらく登っていると、上の方から40代と思しき男性が下りてきました。
そして、すれ違う時に男性から挨拶をされましたが、彼女たちは声を出すと女性だと気づかれてしまうと思い、軽く会釈だけを返しました。
「ちょいと待ちな、あんたら・・・」
男性は彼女たちを呼び止めて、じっと見つめます。
「いや、何でもないわ。気をつけてな」
そう男性に言われ、彼女たちは軽く頭を下げました。
どうやら、男性には気づかれなかったようでした。
彼女たちはしばらく登って行った所で、広めの場所を見つけて休憩をしました。
お姉さんと友人の一人の山岸さん(仮名)が座って休憩をしていると、もう一人の友人の瀬川さん(仮名)が「少しその辺を見てくるね」と言って行ってしまいました。
しかし、しばらく経っても瀬川さんが帰ってきません。
心配になったお姉さんと山岸さんは、二人で瀬川さんを捜すことにしました。
ただ、瀬川さんを捜していると、いつの間にか山岸さんとも逸れてしまい、お姉さんは一人きりになってしまいました。
そして、ふと背後から視線を感じて振り返ると、木の陰から6歳くらいの男の子が覗いています。
あれ?なぜこんな所に・・・と疑問に思いながらも、お姉さんはその子に声をかけました。
しかし、その子は返事をせずに、木の陰に隠れてしまいます。
お姉さんは不思議に思いながら、その子が隠れた木の裏を覗いてみました。
すると、そこには誰もいませんでした。
そういえばさっきの子、こんな寒いのに薄手のシャツ一枚で裸足だったような・・・。
お姉さんはそんなことを考えていると、どこからともなく数人の子供の笑い声が聞こえてきました。
驚いて周りを見ると、何本もの木の陰から子供達が覗いています。
お姉さんは軽くパニック状態になってしまい、走り出してしまいました。
気がつくと、目の前には山の麓で登りの時にすれ違った男性と山岸さんがいました。
男性は「話は後で」と言うと、再び一人で山に入って行きました。
山岸さんの話によると、お姉さんと二人で瀬川さんを捜していた時に、気がつくと一人になってしまったと言います。
そして、迷うといけないと思って山道の付近にいると、登りの時に会った男性が走って登ってきたそうです。
「あんたら無事か?他の二人は?」
男性がそう聞いてきたので山岸さんは今の状況を話し、お姉さんと瀬川さんを男性と一緒に捜していたそうです。
男性は登りでお姉さんたちとすれ違った時に、もしかしたら・・・と思って、再び山を登って来ていたそうです。
お姉さんは山道の近くで倒れていました。
とりあえず男性がお姉さんをおぶって、山岸さんと山を下りたとのことでした。
しばらくすると、男性が瀬川さんを連れて下りて来ました。
その後、彼女たちはその男性から、その山についての話を聞きました。
なんでも、彼女たちがパワースポットだと思って登った山は、昔に子供がよく捨てられた山だったそうです。
そして、その山に女性が入ると、母親が恋しい捨てられた子供の霊が寄っていってしまうため、女人禁制の山になったそうです。
それ以降、お姉さんたちは皆、パワースポット巡りをやめました。
「立ち入り禁止となっている場所は、それなりの理由がある。そういった所にはなるべく近づかないようにね」
この話を聞いた時に、私はお姉さんからそのように言われました。
(終)