原付バイクでの四国一周ツーリングにて
これは、少し奇妙な体験をした時の話です。
僕は高知県で育ったのですが、高校生の頃に四国一周巡りをしようと、友人たちとバイクでツーリングに出かけました。
ただ、当時の僕たちは原付しか持っていません。
なかなか思うように距離が伸びず、仕方なく近くの無人駅で野宿をすることにしました。
隣の愛媛県に伊予土居駅という場所が近くにあることを知り、あてずっぽうに田んぼの畦道を右往左往しながら向かいました。
その途中、先頭を走る者が足を滑らし、田んぼに単車ごと倒れてしまいました。
後に続く僕たちも急ブレーキでバランスを崩し、同じく田んぼの中へ。
もちろん泥んこになりました。
その後、やっとの思いで目的の場所に到着し、すぐに就寝することに。
翌朝、始発列車の音に起こされました。
僕たちは乗客からの好奇の目に晒されながら、朝もやの中を松山市に向けて出発しました。
そして出発してすぐに、「あっ、家に無事の連絡を入れておこう」と思い立ち、公衆電話から自宅に電話をしました。
数回のコールの後、電話口に出たのは母でした。
僕「あ、お母さん?今、愛媛の伊予土居ってところ。みんな無事やき」
母「あんた、ほんまに大丈夫かね?お母さん、変な夢を見たぞね」
僕「はぁ?何?」
母「あんたらみんな土の中に首まで埋まって『助けてくれー』って言いよった」
僕「・・・・・・」
僕は思わず、受話器を落としそうになりました。
なぜなら、僕たちが田んぼの中へ落ちたことと、母が見た夢の内容との奇妙な類似に少しゾッとした他なりません。
(終)