ビルの地下工事の写真に写っていたもの
それは、隅田川の側でのことだった。
某ビルの地下で、冷温水発生機の160tレッカーによる搬入作業をしていた。(夏は冷水、冬に温水を作る機械。吸収式500t。1t=1000kg)
時間は深夜2時頃。
やがて本体の一番大きい部分が入ってくる。
重量は約70t。
この時の私は、ただ作業を見守っていたわけではない。
工事終了後に提出する完成図書のために、工事写真を何枚も撮っていた。
作業も順調に進み、無事に機械も据え付く。
時間は既に朝4時。
作業員は全員帰ったが私は6時から次の作業のため、さっきまで撮影していた工事写真の整理をすることにした。
200枚近い画像をチェックする。
手振れやピンぼけのものを削除し、使えるものを提出用のフォーマットに張り付けていく。
その最中、「ん?何だ?」と手が止まる。
その画像には、画面いっぱいに無数のシャボン玉が写っていた。
そう、あれだ。
世間では『オーブ』と言われる玉響現象だ。
しかも、冷温水発生機の搬入作業を撮った20枚くらいの全てに写っていた。
思い返せば、この写真を撮っていたのは「丑三つ時だったな」と。※丑三つ時=午前2時から午前2時30分の間で不吉と言われている時間帯
これでは工事写真として使えない。
私にとっては、そのことの方がよっぽど怖かったが…。
(終)