形見としてもらったCDラジカセの怪異
これは、母方の祖母が亡くなった時、私が形見としてもらった『CDラジカセ』の怪異話。
祖母の葬式などが一通り終わった後、住んでいた家を処分することになった。
残された家具を捨てる分と売る分、それに叔父叔母と分ける分の仕分けで、母は毎週末になると祖母の家に出向いていた。(祖父はすでに他界)
中学生だった私は手伝いのために連れて行かれることがあり、たまに気に入った小物などを駄賃として持って帰っていた。
ある日、倉庫の家具を片付けていた時、CDラジカセが奥から出てきた。
当時そういったものを持っていなかった私は一目で欲しくなり、母に頼み込んで自分のものとして持って帰ることができた。
しかし、使ってみると少し変なことがあるのに気づいた。
音声が時々、5秒くらい途切れることがあった。
その現象はカセットテープ、CD、ラジオの区別なく発生していた。
ただ週に2~3回程度の頻度であったし、元々が倉庫で埃を被っていたものなので、祖母がそういう不具合を嫌って片付けていたのだと考えていた。
それから数年。
大学の下宿にもそのCDラジカセを持ち込んで使っていたが、相変わらず不具合は収まることはなく、また頻度は日に1~2回と増えていた。
堪り兼ねて電気屋で見てもらったが、異常はどこにもなし。
そんな頃、同じサークルの友人が下宿を訪ねてきて、ちょっとした酒盛りをすることになった。
酔いが程よく進んだ時、何気なく聞いていたラジオの音声が途切れた。
(ああ、またか)
そう思っていると、唐突に友人がお酒をブッと噴いた。
咳き込む友人の介抱をしていると、「あんた…すっごいもの持ってるね」と、咳き込みつつも笑いを堪えている感じで言ってきた。
私は「何が?」と聞き返すと、「あのラジカセ、どういう理屈かわからないけど、霊の声を拾ってるよ」と言う。
友人にはそれなりに霊感があるらしく、相性だか波長が合うと、見たり聞いたりできるとか。
飲んでいる最中にたまたま波長の合う霊(害のない浮遊霊らしい)が通りかかって、ボソボソと呟いているのに気づいたらしい。
そのまま無視を決め込んでいると、CDラジカセからその呟きが一拍遅れて聞こえてきたので、驚いて噴いたという。
ちなみにこの時、ゼロ感な私には無音状態だった。
ただ、呟きの内容について全く教えてくれなかった。
曰く、「霊の声を聞いたってことを疑われるくらいにアホらしい呟きだったから教えたくない」とのこと。
CDラジカセそのものに何かの霊が取り憑いているわけでもなく、付喪神とかそういうものでもないようなので、なぜ霊の声を拾うのかは友人にもわからないという。(友人は波長が合わなくても居る居ない程度はわかるとか)
そんなことからしばらくして、そのCDラジカセは電化製品廃品回収の軽トラに引き取ってもらったが、その直前に近所の神社にてお祓いをしてもらったのでその後はたぶん何事もないと思う。
そのCDラジカセについて母にも確認したことがあるが、特に何も知らないようだった。
(終)