生まれた時の写真に写る人
ある男が、年下の婚約者を
両親に紹介するために実家へ帰った。
婚約者は、容姿、家柄、学歴等、
申し分の無い女性であったが、
どうも両親の態度が芳しくない。
結婚に反対する訳ではないのだが、
婚約者を見る目が何となく暗い。
男は、夜になって
母親と二人きりになった際に、
何か気になる事でもあるのか?
と聞いてみた。
母親はそれには答えず、
タンスの引き出しから
1枚の写真を取り出した。
初めて見る写真だった。
「お前が生まれた時の写真だよ」
産湯に浸かった赤ん坊を、
産婆と父親らしき男性が
覗き込んでいる。
「・・・ここ見てみ」
母親は赤ん坊の足元あたりの
水面を指差した。
そこには、
笑顔で赤ん坊の方に手を延ばす、
婚約者の姿が写り込んでいた。
(終)
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