何か変なモノが写っている気がして

火災

 

これは、1998年頃の体験話です。

 

千葉県に住む友人の家に、パソコンの設定を頼まれて訪ねた時のこと。

 

設定中、友人が何だか落ち着かない様子で私に話しかけてきました。

 

「あのさぁ・・・昨日、近所で火事があったんだけどさぁ・・・」

 

「それで?」

 

「写真撮ったんだけど、何か変なモノが写ってる気がして」

 

「どれ?」

 

私が友人のデジカメの液晶画面で確認すると、それは友人宅の窓から写したもので、真っ黒な煙が上がっているようでした。

 

ですが、解像度が低くてよくわからなかったので、友人のパソコンに画像を取り込んで大きく見てみることにしました。

 

確かに、真っ黒な煙が人の顔のようにも見えます。

 

私は少し気になりました。

 

「この火事でさぁ、一人暮らしのじいさんが亡くなったんだよね」

 

そう言われて、余計に気になりました。

 

早速、この当時交流のあった心霊系サイトの仲間に見てもらおうと思い、私の持ってきていたフロッピーディスクに画像をコピーしようと試みました。

 

その直後、友人宅のリビングにあった高さ1メートルほどの置物が突然バタン!と音を立てて倒れました。

 

私と友人はビクッとして、同時にそちらを眺めました。

 

「まさか、これって心霊現象?」

 

友人が真面目な顔でそう言います。

 

「まさか・・・風だろ?」と返す私。

 

でも実は相当ビビッていました。

 

なにしろ、リビングは窓がぴたりと閉じられ、空調も入っていなく、何よりもその置物は重心が低くて自然には倒れないものでした。

 

あまりに不自然な現象でした。

 

気にしないようにして家に戻り、すぐさま心霊系サイトの仲間に画像をメールをしました。

 

画像1枚あたりの容量が100KB未満だったので、それほど負荷なく送れるはずでした。

 

ですが、いつもよりも送信に時間がかかるのです。

 

おかしいな?と思っていると、仲間からの返信で『送られてきた画像が開けない』とのこと。

 

データが壊れたかな?と思って再送すると、『やはり見られないが、さっきと違う画像を送ったのか?』と妙な質問が返ってきました。

 

私は疑問に思って詳しく聞いてみると、『さっきよりファイルのデータ量が増えてるんだけど』とのことでした。

 

私が「えっ!?」となっているところ、仲間からさらに『放っておくと画像ファイルのデータ量が勝手に増えていく。ウィルスに感染したかもしれないから削除する』との返信がきました。

 

おかしなこともあるものだと思い、私はやむを得ず自分のホームページ用のスペースに問題の画像をあげてみましたが、仲間たちからは『解像度が悪いのでよくわからない』との返事。

 

当時は低解像度のデジカメだったので仕方なかったのかもしれません。

 

それにしても、通常に比べて画像の転送速度が容量のわりに遅いのは、やはり気になりました。

 

そうこうしているうちに午前0時を回ったので、作業を終えて私は床に就きました。

 

変な夢を見たのはその晩のことでした。

 

時間は2時過ぎ頃かと。

 

暗闇の中、一人の老人が苦しそうに私に何か訴えるように唸っています。

 

顔だけしか見えないのですが、「うーうーうーーーー」と。

 

しかも、暗闇は徐々に赤みを増していき、炎の中のように感じられました。

 

「うーーーうーーーうーーー」

 

唸り声がピークに達した時、私は目が覚めました。

 

ただ、耳の中にまだ老人の唸り声が?と思ったのですが、そんなことはありませんでした。

 

「ウーーーーーーーーゥ」と、今にも止まりそうな消防車のサイレンが辺りに響いていました。

 

何事か?と思い、外を見て私はビックリしました。

 

曇りガラスの向こうに、消防車の赤色灯と赤々と揺らめく炎。

 

斜め向かいの家が火事になっていたのです。

 

ここは建物が密集している下町。

 

万が一、うちにも延焼をしたらまずいので、すぐにでも逃げる準備をしようと立ち上がると、私のパソコンは起動したままモニターには件の画像が表示されていました。

 

「まさか、これが原因?」

 

寝ぼけていたせいか、素直にそう感じた私は、フロッピーディスクやパソコン内に保存したもの、ネット上にあげたものまで全て消去していきました。

 

すると、そのうちに火は収まり、大勢の野次馬が集まる中、消防車は引きあげていきました。

 

もちろん、この火事と件の画像は何の関連性もなかったのかもしれませんが、少し怖い思いをした夜でした。

 

でも、その画像を残しておかなくて良かったと、今でもそう信じています。

 

(終)

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