壁に貼られていた御札を剥がしてから
昔、陸上自衛隊に所属していた時の話。
前期教育といって、まず入隊したら3ヶ月の新人教育を受ける。
俺が入隊した時期は年をまたいでいたので、宿舎なんかの大掃除をした。
入隊経験のある人なら分かるだろうが、軍隊というところは隅から隅までピッカピカにさせられる。
宿舎は8人部屋で、ベッドの脇には服なんかをしまっておく個人用の縦長のロッカーがあったのだが、それらも動かして綺麗にせよと命令があったので実施した。
すると、ロッカーの裏の壁には『古びた御札』が貼られていた。
アホだった俺達は、みんなでバカ騒ぎしてその御札を剥がしてしまった。
翌日、外で射撃予習の訓練をしていると、班長が怒り狂って飛んできた。
なんでも、「ロッカーを開けっ放しでおまえら出で来ただろ!バカちん共!」と激怒しておられる。
我々はこってり絞られた後、整理し直せと部屋に戻された。
部屋に戻ると、確かに整理して出たはずだったのだが、8人全員のロッカーの扉がまるで分度器で測ったかように90度に開いていた。
正直、その光景は気味が悪かった。
それからというもの、骨折やらの怪我をする者が続いたり、全員の時計が一斉に壊れたり、夜中に壁からコツコツと叩く音が延々と聞こえたりと色々あった。
そんなある時、古参の班長が「おまえらもしかして御札剥がしたろ?戻しとけ!」と言われ、捨てずに茶器戸棚にしまってあった御札を元に戻した。
すると、今までの色んな災い事がピタリとやんだ。
こんな事って本当にあるんだなあ、という出来事だった。
(終)