呪う女 7/18

慎は立ち上がり、

「よし、このカメラを早く現像して、

警察に持って行こう」

と言った。

 

俺達は山を駆け降りた。

 

山を降り、俺達は駅前の

交番へ急いだ。

 

このカメラに納められた写真を見せれば、

中年女は捕まる。俺らは助かる。

 

その一心だけで走った。

 

途中でカメラ屋に寄り、現像を依頼。

 

出来上がりは30分後と言われたので、

俺達は店内で待たせてもらった。

 

その間、慎との会話はほとんど無かった。

ただただ写真の出来上がりが待ち遠しかった。

 

そして30分が過ぎたころ、

「お待たせしましたー」

バイトらしき女店員に声をかけられた。

 

俺と慎は待ってましたとばかりに

レジに向かった。

 

女店員は少し不可解な顔をしながら、

「現像出来ましたので、中の確認を

よろしくお願いします」

と言いながら、写真の入った封筒を差し出した。

 

まぁ現像後の写真が、犬の死骸や

釘に刺された少女の写真のみだから、

不可解な顔をするのも当然だが・・・

 

慎はその場で封筒から写真を取り出し、

すべての写真を確認し、

 

「大丈夫です。ありがとうございました」

と言い、代金を支払った。

 

店を出て、すぐさま交番へ向かった。

これで全てが終わる・・・ 

駅前の交番へ二人して飛び込んだ。

 

「ん?!どうしたの?」

 

中にいた若い警官が、笑顔で

俺達を迎えてくれた。

 

俺達はその警官の元に歩み寄り、

「助けてください!」

と言った。

 

俺と慎は、あの夜の出来事を話した。

 

裏付ける写真も、一枚一枚

見せながら話した。

 

そして、今も『中年女』に

狙われている事を。

 

一通り話し終わるとその警官は

穏やかな表情で、

「お父さんやお母さんに言ったの?」

と言った。

 

俺たちは親には伝えてないと言うと、

「ん~んぢゃ、家の電話番号を

教えてくれるかな?」

と警官は言い出した。

 

慎が、

「なんで親が関係あるの?

狙われているのは俺達だよ?!」

とキレ気味に言い放った。

 

ちなみに慎の両親は医者と看護婦。

高校生の兄貴は某有名私立高校生。

 

俺達3人の中で一番裕福な家庭だが、

一番厳しい家庭でもある。

 

あの夜は親に嘘をついて秘密基地に行き、

このような事に巻き込まれたとバレれば、

 

俺や淳もだが、慎が一番

洒落にならないのである。

 

「助けてよ!警察官でしょ!!」

と慎が詰め寄る。

 

警官は少し苦笑いして、

「君達小学生だよね?やっぱり、こーゆー事は

キチンと親に言わなきゃダメだよ」

 

と、しばらくイタチゴッコが続いた。

 

挙句に警官は、

「じゃあ君達の担任の先生は何て名前?」

 

など、俺達にとっては脅しに取れる言葉を

投げかけてきた。

 

まぁ警官にとっては、俺達の保護者

及び責任者から話を聞かないと・・・

って感じだったのだろうが、

 

俺達にとって、こういう時の親や先生は、

怒られる対象にしか考えられなかった。

 

そうこうしているうち俺達の心の中に、

目の前にいる警官に対して不信感が

芽生えてきた。

 

このままここに居れば、

無理矢理住所を言わされ、

親にチクられる!と。

 

この警官は、俺達の話を

信じてくれてないのでは?

と俺は思い始めた。

 

俺や慎が必死に助けを求めているのに、

『親』『先生』ばかり言ってくる。

 

俺達は『中年女』の存在を裏付ける、

証拠写真まで持参しているのに・・・

 

俺はもう一度警官に写真を見せつけ、

「犬をこんな殺し方する奴なんだよ!」

と言った。

 

すると警官はしばらく黙り込み、

写真を手に取って意外な一言を言った。

 

「ん~・・・これって犬?なの?」

 

「は?」と俺と慎は驚いた。

この人は何を言っているんだろう!と。

 

続けて警官は、

「いや、君達を信じていない訳じゃないよ。

じゃあもう少し詳しく教えて。ここが頭?」

 

警官は冗談を言っている訳では無く、

本当に分からないようだ。

 

俺はハッピーの写真を取上げ、

「だから・・・」

と説明しかけて言葉が詰まった。

 

確かにこの写真を客観的に見ると、

犬の死骸には見えないかも・・・と思った。

 

薄茶色に変色した骨に、所々

わずかに残っている毛。

 

俺と慎は、ハッピーが死体になった翌日にも

見ているので、腐食が進んでいても

元の形(倒れていた角度、姿)を知っているが、

 

知らない奴が見ると、ただの汚れた石に、

汚い雑巾の様なものが絡んでいるようにしか

見えないかも知れない。

 

俺は冷静に他の写真も見てみた。

 

板に刻まれた『淳呪殺』、

少女の写真に無数の『釘』。

 

たしかに『中年女』の存在に、

直接結び付けるのは難しいのか?

 

ひょっとして警官は、

小学生の悪戯と思っていて、

先程から『親』『担任』などと

言っているのか?

 

俺はこのままここにいては

危険だと感じ出した。

 

「絶対、親を呼び出すつもりだ!」

俺は慎に小さな声で耳打ちした。

 

慎は無言で頷き、アゴをクイッと動かし、

外に出る合図を送ってきた。

 

すると次の瞬間、慎は勢いよく振り向き

走り出した。

 

俺もすぐさま後を追い、

交番から抜け出した。

 

後ろから「おいっ!」と警官が

呼び止める声がしたが、

俺達は振り向かずに走り続けた。

 

警官が追いかけてくる気配は無かった。

 

警官はおそらく、悪戯しに来た小学生が、

嘘を見破られそうになり逃げ出した、

とでも思っているのだろう。

 

(続く)呪う女 8/18へ

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