亡くなった祖母が夢に出てきた日
これは、亡くなった祖母が夢に出てきた日の話。
親戚のみなさんと温泉旅館で温泉に入っていたら、脱衣所に通じる戸が開き、祖母が「みんなありがとう。お疲れさん」みたいなことを言って戸を閉めた。
そんな夢を見た朝、起きてからカレンダーを見ると、ちょうど『初七日』だった。
「大丈夫だね」
またある日、祖母が夢に出てきた。
祖母はずっと暮らしていた田舎の家の中で、長男の嫁である叔母に付いて家の中をグルグルと周っていた。
ただ、叔母には祖母が見えていない様子。
一通り周ったところで、「大丈夫だね」という感じのメッセージが頭に入ってくるや、そのまま霧が晴れるように祖母が消えたところで目が覚めた。
カレンダーを見ると、ちょうど『四十九日』だった。
「あぁ、本当にいなくなったんだ・・・」と思って、葬式の時より泣いた。
その話を父にしたところ、「婆ちゃんはワシの夢には出てこないんだよな・・・」と寂しそうに言った。
それから一年経ったある日、父が嬉しそうにこんなことを語った。
「このあいだ、婆ちゃんが夢に出てきてな。暖簾(のれん)の向こうで隙間からじっと見つめてくる人がいて、顔は隠れてるけど姿かたちはどう見ても婆ちゃんだったから、『ばあちゃんか?』って聞いたら、焦って手を左右に振って『違う!違う!』みたいな素振りをして走って逃げちゃった」と。
さらに数年後のある日、また祖母の夢を見た。
「ここをね、こんな風にハイカラにしたんだよ」と、父の実家の家の中を見せてくれた。
囲炉裏があった部屋が、洋風のリビングになっていた。
ただ、私がその向こうの戸を開けると、真っ白で何も見えなかった。
振り返って祖母に「なんで真っ白?」と聞いてみたら、「すまん。仏壇からはここまでしか見えないんだ」と申し訳なさそうに言われた。
後日に父から、実家の従兄の長男が結婚するから家をリフォームしたらしいと聞いた。
今度、新しい家のお披露目があるから行って来ると言われた。
私の願望で見た夢ではなさそうだ。
(終)